夢から醒めた夢
そんな声を聞いて、思わず足を止めた。
そこへ彼は近寄ってきて、逃げないようにか、前から私の両手を掴んだ。
「これでも、結構堪えたんだ。嘘ついてまで逢いたくないとか言われるの」
「あ……」
バレないようにしていたつもりだけど、思いっきりバレていたみたいだ。
だけど、そこまで憔悴するようなことだっただろうか。
「俺が悪いよ。何も言わずにやりたいようにやっていたから」
そうだ。
せめて、セフレだったらそう言ってもらったら、まだやりようがあったのに。
「しかも、瀬本さん……お母さんから俺のこと聞いたんだろう?女を食い物にしているって」
それは間違いないから、静かに頷く。
「その上、俺がいなくなったあとに男たちが菜緒って子に余計なこと言ったらしいし。俺、イメージ悪すぎる。
まぁ、最初にヤってしまっているから弁解する余地もないんだけど」