イジワルなくちびるから~…甘い嘘。【完】
思いっきりバカにされムカついたけど、それ以上、反論はできなかった。実のところ私もそう思っていたから。
確かに、思春期真っただ中の中学生にあんなこと言う男……ヤバいよね。今思えば、ホント、お子ちゃまだったな。
そして、その言葉を信じて二十歳になるのを指折り数え何年も待っていたなんて……自分で言うのもなんだけど、私って天然記念物級の大バカ女だ。
久しぶりに当時のことを思い出し、ため息を漏らす。
――そう、あれは十年前……中学一年の夏……
当時の私は特に絵の才能があったワケじゃないけど、絵を描くのが大好きだった。
だから、中学に入ったら絶対に美術部に入部しようと思っていたのに、私が入学した中学は部員不足で美術部が廃部になっていたんだ。
そういうワケで、仕方なく小学校の低学年から近所の雑居ビルで週に一回行われている絵画教室に引き続き通うことにしたんだけど……
その絵画教室は、区の人なら誰でも無料で利用できるシステムになっていたが、宣伝不足なのか、毎回、シルバー世代の人が七、八人参加する程度で若者は私ひとり。
それでも絵を描けることが嬉しくて土曜日の午後を心待ちにしていた。
そんなある日、いつものように一番乗りで絵画教室に行った私はドアを開けた瞬間、思わず息を呑みその場に立ち竦む。