イジワルなくちびるから~…甘い嘘。【完】
――そして、五日後……
今日は新太さんが帰国する日。昼過ぎに成田に到着するから、彼が泊まるホテルでディナーをする約束をしいてた。
が、しかし、朝から緊張して仕事が手に付かず、自分でも驚くような凡ミスを繰り返している。
「希穂ちゃん、この招待状、日付が先月になってるよ」
「えっ? マジ?」
久しぶりに事務所に遊びに来てくれた輝樹君に指摘されなかったら、危うく間違った日付の招待状を発送してしまうところだった。
「どうしたの? どっか調子でも悪いの?」
「あ、いや……」
男性の輝樹君に、初体験のことで頭がいっぱいで仕事どころじゃないなんて言えるはずもなく、笑って誤魔化していたら、輝樹君が新太さんのCM契約の話しをし始めた。
「昨夜、新太先輩からメールがきたんだよ。凄いな……新太先輩」
感心して大きく息を吐く輝樹君を見て、まだ彼に私と新太さんの関係を言ってなかったということに気付く。
いつまでも黙ってるのもなんだし、そろそろ話してもいいかな……
そう思った私は輝樹君に、新太さんと付き合っていて、今夜会うことになっているのだと伝えた。すると驚いた輝樹君が大きく目を見開き、私を凝視する。
「うそ……希穂ちゃん、新太先輩と付き合ってるの?」
「うん、新太さんが何も言ってないみたいだったから黙ってたんだけど、別に隠す必要なんてないしね」
照れながら微笑むと輝樹君の顔がみるみるうちに引きつっていく。