呪い
この間別れたカレシというのは、よそのクラスの男子生徒だ。もともとは祥子が「いいな」と言っていた人だ。別に横取りしたわけではなく、男子のほうから沙樹を誘ってきたのだった。
沙樹は一応祥子にことわりを入れた。すると、
――別にいいわよ、気にしなくて。狙ってたとか、そういうんじゃないし。
そう言って、白い歯を見せて笑った。だから、お言葉に甘えてつきあい始めたのだった。
でも、祥子の本心が言葉通りだったとは限らない。もしかしたら、傷ついて、陰で沙樹のことを恨んでいたかもしれない。
そうだ。
それから……真由だって可能性がある。
いつも陽気に冗談めかして、
――あーあ、カレシ、欲しいなあ。
なんて言っている。あれが意外に本心なのだろう。
高校に入ってすでに三人の男子とつきあった沙樹のことを、妬んでいたとしても不思議はない。
沙樹は今朝のふたりの様子を思い浮かべた。
ふたりとも本心から沙樹の体調を気づかってくれているように見えた。
でも、実はあれが仮面で、腹の中では、
――ザマァ見ろ。
と、沙樹を見くだしていたとしたら……。
沙樹はおぞましさに体を震わせた。
(あっ、でも……)
そのとき、別の可能性に思い当った。