呪い

父親の再婚相手の一美さんだ。

母親づらしようとするのが鼻につく。沙樹はできるだけ嫌悪感を顔に出さないようにしているつもりだが、そんなのは態度を見ればわかるだろう。再婚して一年になるというのに、一向になつかない沙樹のことを、憎んでいたとしても不思議はない。

沙樹がお風呂に入っているすきに部屋に入って、人形をベッドの下に放りこめば、一分もかからない。十分にありうる話だ。

そして……。

一美さんに可能性があるのなら、もちろん、父親が犯人ということもありえる。

いつまでも再婚相手になつかない娘。いつもよそよそしくて、父親を嫌っている娘。あの人にしてみれば、新しい妻と新しい子供を作ることにして、いっそ沙樹を排除したほうがいいのかもしれない。

(どうしよう。一体誰なんだろう?)

沙樹は泣きたい気分だった。

沙樹が悪夢を見はじめたのは日曜の晩、というか月曜の朝未明からだった。

ということは、今考えた四人のうちの誰かが、日曜日のうちに人形を放りこんでいった可能性が高い。

考えはじめると、みんな怪しいように思えた。

(でも、とりあえずは……)

と、少しだけ冷静になって、沙樹は別のほうへ思考を向けた。

誰が犯人かはわからないけれど、とりあえずはまず、目の前の人形をなんとかしないといけない。

床に放り出した人形をじっと見つめる。

これをどうすればいいのだろう?

単に捨てるだけでいいのか。それとも、ほかに何か儀式が必要なのか。

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