呪い
その態度が気にはなったが、なんとなく近寄りがたい。
実際には、「〇〇のことで占って」とお願いすると、嫌な顔もせずに占ってくれる人らしいのだが。
「うーん、別にいいよ」
沙樹はできるだけ明るくふたりに答えた。
「ありがとう、心配してくれて。大丈夫。たかだか夢のことだから」
「そう……?」
真由はなおも心配してくれたが、じきに始業のチャイムが鳴って、ふたりとも席へもどっていった。
沙樹はまじめに授業を受けるほうだ。成績もけっこういい。大学へは進学したいと思っているものの、どの大学のどの学部かとなると、具体的なイメージが浮かばない。ただ漠然と大学へ、と思っているだけだ。
体調は悪かったが、いつも通り授業を受け続けた。その途中、何度か視線を感じた。
後ろのほうからだ。
ふり返ると、あの九ケ沼康子が自分のことをじっと見ていた。ふり返った沙樹と目が合うのだが、不思議に合ったという感じがしない。それは今朝と同じだった。
康子の表情から感情を読み取ることはできなかった。ただ、彼女は沙樹を見ながら、沙樹とは違うものを見ているような気がした。
康子は沙樹がふり返ると、じきに黒板のほうへ目をもどした。それで沙樹もすぐに顔を正面へもどす。そんなことが、午前中だけで数回あった。
昼休み、いつも通り真由と祥子と弁当を食べたあと、沙樹は思いきって康子に声をかけてみた。
「九ケ沼さん、あたしに何か話ある?」
ちょっときつい言いかただったかもしれない。
教室内のざわめきがスーッと引いて、静かになった。