君の本当をこの瞳で見つめて。


確かに同じ値段ならいくらでも食べたいし、味わいたい。

それでも、ここは限られたもので一つ一つ丁寧に作っている。

それを一人でも多くのお客さんに、味わってもらいたい。

私一人で味わいつくせないものが……ここにはある。


「本当に素敵な方ですね。貴方は」

「へっ……?」

「呪がありながらも、それと必死に戦って前へ進もうと努力なさってる。そんな貴方が、素敵です」


く、口説かれてる……??

それともただ、褒められて――いやいやいや、そんな褒められるようなことしてもないし、言っても……

――言ってもない。

普通に接してはいるものの、この会話が急に怖くなってくる。

もしかして、この人詐欺師とかそんな部類に属してる人だったら……この状況とてつもなくヤバイ。

素顔を見られないように顔を隠しているなら、もう納得するしかないし、口説かれてるならまだしも、お金巻き上げようとしてくるならもう逃げるしかない。

どうしようと一人考えていると、オーナーさんがぽつりと呟く。


「やっぱりこうなるんですよね……」


正体がバレたことに対してなのか、なんなのか。

少し落胆したかのようなその声は、作戦失敗したから強行突破するしかないという意思の現れなのか……それまた別の考えか。


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