君の本当をこの瞳で見つめて。
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久々の実家に帰れば、暖かい雰囲気に包まれて、帰ってきたことをひしひしと実感する。

お風呂上りにリビングの机でホットミルクを飲みつつ、ソファーでビールを飲みながら野球観戦をしている父の背中を見る。

いつ見ても父の背中は大きいなあ……

一家の大黒柱として日々働いては、好きなことを好きなだけやる父が少し羨ましく感じる。

そんな事を思っていると、母が向かいに座る。


「あんた、仕事は順調なの?」

「うーん、まあぼちぼちって所かな」

「そう。あまり無理しちゃだめよ」

「大丈夫、大丈夫。でもこっち来てビックリしちゃった。あんなに活気あった商店街が人いないんだもん」


今日見てきた事を母に伝えると、母は懐かしい記憶を辿りながら商店街を思い出してそっと口にする。


「あんたの初めておつかいをさせた時も、あの商店街だったものねえ。帰り道迷子になって、大家の近藤さんと一緒に帰ってきたのはビックリだったけど」


くすくすと笑う母に、釣られて笑う。

確かにそんなこともあったなあ……あそこにはたくさんの思い出が詰まってる。

私の、この町の大切な場所。


「バイパスが出来上がってから大型スーパーも出来て、みんなそっちに流れちゃったものねえ。人がこなくなるのも分かるけど、あんなに寂れちゃうなんて予想外だったわ」

「でもね、今日素敵なカフェをあの商店街で見つけたんだよ」


あのコーヒーとティラミスの味を思い出しながら、母に自慢気に話す。



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