君の本当をこの瞳で見つめて。
そうしてまた来る事を約束して店を出て、いつもの道へと出ると、ほんの少し寂しさを感じた。
明日になったらあの通りは、シャッター街のようになくなってしまうのではないかと不安な気持ちが溢れ出た。
ちらっと後ろを振り返れば、そこには洒落た道が続いている。
また来るんだし、大丈夫。
そう自分に言い聞かせて家へと向かえば、日はもう半分落ちていた頃だった。
「本当に素敵な所だったんだよ。あそこに並んでる店も同様に、なんか洒落た空間って感じだったの」
「あの商店街に……お洒落な空間……ねえ」
「お母さん知らないの?」
「見た事も、聞いた事もないわねえ……」
てっきりこの町に詳しい母のことだから、噂くらいは知ってると思っていたけどそうでもないらしい。
壱目さんの叔父さんが切り盛りしてた頃は人で賑わってたって言ってたから、昔からあるものだと思ってたのに。
やっぱり不思議な場所なのかな……なんて、子供が想像するようなことばかり考えてちゃだめか。
「そういや、雪帆。あんたどれぐらいこっちにいる予定なの?」
「んー、一週間」
「随分と長いのね。まあ、ゆっくりしていきなさい」
「うん」
少しぬるくなったホットミルクを一気に飲み干し、二階の自分の部屋のベッドへと転がり込む。
明日、また行ってみよう。
あのワクワクをまた味わいたい。
移動しっぱなしだった体が疲れを訴えてきて、眠気が徐々に私の体を包む。
夢の入口でも、あのコーヒーの香りがほんのり漂っていた。