君の本当をこの瞳で見つめて。


「それで、どんないい事があったんですか?」


鏡をしまいながら、私にそう聞く壱目さんにとびきりの笑顔を向けて話し始める。


「実はですね〜初恋の人に明日の夜に、プチ同窓会を開いてもらえることになったんです!」


言われた言葉が頭の中で何回も再生されては、顔が少し熱くなるのが分かる。

自分でも単純だとは思うけど、でも一度好きになった人に声をかけてもらえたということ、それだけで私は幸せな気分に包まれる。

昔とは違う大人になった私を見てもらえるチャンス。

でも、まだ自信はない。

ちゃんと向こうが私を女として、見てくれている確信もない。

ほんの少し恋愛をすることに対して、怖いという感情を抱いている私も心の奥底にいる。

こんな私を見てもらえるわけがない、ただ期待するだけ無駄だって嘲笑う私自身がいるのかもしれない。

でも、逃げたくない。

この気持ちを濁して過ごしていくぐらいなら、当たって砕けたい。

――自分の気持ちはまだよく分からないけれど。

すると、飲み終わってないのに壱目さんが新しいラテアートを描いたエスプレッソを出してきた。

ハートマークが綺麗に重なりあった四つ葉のクローバーが、見事にそこに描かれていた。

ゆっくりと壱目さんを見れば、少し苦笑いを浮かべていた。


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