君の本当をこの瞳で見つめて。


どうしたのだろうと小さく首を傾げて、壱目さんを見つめる。

一体どうしたんだろうと声をかけようとするけれど、その雰囲気に何故か言葉は口の外へ出てはいかない。

そんな私に対して、壱目さんは無理に口角を上げて胸に手を当てた。


「貴女の望む道がもしかしたら、辛い道かもしれません。私はそれを止めたい。でも私は……そんな貴女の背中を押すことしかできません」

「え……?」

「貴女には笑顔が似合います。だからどうかそんな顔しないでください」


ね?と首を傾げて、笑ってみせた壱目さんはいつもとどこか違う、そんな気がした。

少し戸惑っていると壱目さんは、戸棚の奥から何かを取り出す。

そっとカウンターに置いて、私の前へと持ってくる。

キラキラと色鮮やかに輝く青い石がはめられた、薔薇をモチーフにしたブローチ。

そのブローチに見惚れていると、小さく壱目さんが笑った。


「良かったら明日、これ着けていってください」

「え?!こ、こんな高そうな物、私なんかに似合うわけないじゃないですか……!!」


全力で断ろうと両手を振って受け取らないことを、必死に示す。



< 32 / 81 >

この作品をシェア

pagetop