君の本当をこの瞳で見つめて。
ゆったりと流れる店内なのに、なぜか急に落ち着かなくなる私はフルーツタルトを一気に頬張った。
贅沢者め……!と思いながらも、この空気をどうにか変えないとなんか、私おかしくなりそう。
何なんだろうこの感じ。
いつもと違う壱目さんと、普通に会話ができない。
甘酸っぱいフルーツが口の中に広がり、体を回って心まで浸していくそんな気分。
お代わりはどうなさいますか?と聞かれても、ただ首を横に振ることしかできない。
せっかく作ってくれたクローバーが描かれたエスプレッソも、今はどうしても胸を締め付ける。
「堀川さん――」
壱目さんがそっと私の顔を覗きこみかけたけど、すぐさま鞄を手にし、財布を取り出して立ち上がる。
「ご、ご馳走様でした……!ごめんなさい、あの、用事思い出したので、今日はここで!お釣りいらないです!」
カウンターに千円札を置いて逃げるようにお店から出ようと、扉に手を掛けたその時。
「堀川さん!!」
いつもとは違った壱目さんの声に肩をビクリとさせて、飛び出そうとした体を無理やり引き止められた。