君の本当をこの瞳で見つめて。
「いらっしゃいませ」
唐突に投げかけられたその言葉が、体を大きく跳ねさせた。
カウンターへと視線を動かせば、そこにはスラッとした高身長の男の人が立っていた。
きっとここのオーナーさんなんだろう。
手首が見える位に袖を捲りあげた白いワイシャツに、黒の細身のズボンという格好の上に、真っ黒なエプロン姿。
そこまでは至って、普通の清楚感漂う男性だ。
しかし顔を見た瞬間、思考が止まる。
目を覆うような長い、いや長すぎる前髪が特徴的。
スラリとした鼻立ちに、白い肌。
優しい口元が、その前髪をなんとかカバーするように微笑んでいる。
「どうかされました?」
目と目が合っているわけではないのに、いや、向こうは私と目が合ってるのかもしれないけど、でもなんでこんな視線を感じるんだろう。
ドキドキとうるさい鼓動を抑えながら、何か言わなきゃ気まづくなると判断した私はとりあえず口を動かした。
「あっ、いや……とても素敵な空間だったので驚いちゃって」
「ありがとうございます。そう言って頂けて、こちらも嬉しいです。さあ、どうぞ」
本音をそのまま口にすると、オーナーさんは嬉しそうな声でそう言いながら、椅子へ座るように促してきた。
小さく頷きキャリーバッグを握り直してから、椅子へと向かう。
近くなったその距離にドキドキしながら。