君の本当をこの瞳で見つめて。


そっと自分の目の前に、コーヒとティラミスを順番に持ってくると、お店に入る前に漂ってきたあの香りが強く鼻をくすぐった。


「いただきます」


緊張がまだ解けてないのか、コーヒーカップを持つ手が震える。

そっと一口、喉に流し込むと今まで味わったことのない味が口いっぱいに広がる。


「なっ、なにこれ」


思わず零れた言葉にオーナーさんの肩が微かに揺れる。

それを見て、咄嗟に弁解に入る。


「今までこんな美味しいコーヒー飲んだことないです。奥深い味わいなのに、酸味が弾けて苦味と上手くマッチングして……そのなんか、上手く表現できないんですけど、コーヒーが口の中で舞踏会を開いて踊っている……っていうか、その」


我ながら小学生の感想レベルに、恥ずかしさしか出てこない。

でも、それくらい私に取っては美味しい。

それを伝えたい。

そうか。素直に言えばいいんだ。



――私それで失敗したじゃない。



「すごく美味しい……です」


ちゃんと顔を見て伝えられないけれど、言わなきゃ伝わらない。

それを思い知ったじゃない。





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