君の本当をこの瞳で見つめて。


「昔、この世には人成らざる者達が人間の住む世界で、ひっそりと暮らしていたそんな頃。人は悩みの種を抱えると、ふらりとその場所に立ち寄り、自分の欲望のままに口から災いの種にもなろう言葉を吐き出していきました」


子供に読み聞かせするような、リズムよく話す壱目さんに夢中になっていた。

顔を上げて壱目さんの表情を見ようとするものの、その前になぜか壱目さんが自ら私の顔を自分の胸に押し付けた。

響き合う二人分の鼓動の音は、やけに早く聞こえた。


「そんな人間の迷いと絶望を、吐き出させることを仕事とする者が現れました。その者は瞳に力があり、人の思うこと感じることを言わなくても、その瞳で見る事ができたのです」

「迷いと絶望……」

「そしてその者は人間達の心の拠り所を作った。落ち着いた雰囲気で、自分の思うままの気持ちを全て吐き出して行ったそうです」


自分が見て感じたかのような、その物語にぎゅっと壱目さんの背中に腕を回した。


「そんな者の妹に愛らしい子供が産まれました。ですが、その子供は親の温かみを知ることなく、物心がつく前に捨てられました。――災いの証を持って生まれたが故に」


言葉の最後が少し震えたような気がして、ゆっくりと今度は私が壱目さんの背中を撫でた。

すると耳元に顔を近づけてきて、吐息がかかる。





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