君の本当をこの瞳で見つめて。


そっと壱目さんの唇が離れると、目と目を合わせて二人して笑い合う。

心の奥底で滲んだ傷がゆっくりと消えていくように、心がゆっくりと軽くなっていく。

すると、あっと壱目さんが声を漏らした。

私の額に指先を当て、何か唱えるとこくりと小さく頷いた。


「これで貴女の心を縛っていた呪が消えました」

「呪って……確か初めて会った日もそんなこと言ってたよね?」

「はい。今まで貴女の心を縛っていた、つまり我慢させていたものです。貴女自身の力でそれが消えましたよ」


自分の胸に手を当てて、確かめてみるけれどそれは目に映る事はない。

でも、確かに自分の気持ちを素直に伝えて受け止めてもらえた。

ただそれだけで、今の私には充分だ。

少しずつでいい、強くなればいいんだ。

背中を押して、時には支えてくれるこの人がいる限り。




< 76 / 81 >

この作品をシェア

pagetop