Memorys ‐過ぎ去りし時間‐
会長が副会長に何か合図する。
しかしその合図が分からず首をひねる。

 「一条さん、こちらに来ていただけますか?」

暫くして、救急箱を手に持ってきた。
頬の手当てだと分かる。

 「自分で出来るので大丈夫です」

そんなことしなくてもいいのに。
でも会長めっちゃにらんでるしな…
手当した方がいいよね、救急箱まで持ってきてくれたんだし。

 「時間がないので失礼しますよ」

断る前に頬に触れる冷たい手。 
ズキンと頬に痛みが走り、大きく肩が揺れた。

 「少し我慢してください」

そう言いながらも副会長は私の怪我を手際よく手当してくれた。

 「女性たるもの気をつけたほうがいいと思いますよ」

「すみません…ありがとうございます」

まさかこの人がそんなことを言うだなんて思ってもいなかった。
そんなに私の顔醜くなってたのかな…?

 「どういたしまして」

それともこの行為に裏があるのか…
恩を売っておいて後で返せということなのだろうか?

まだ彼の思考が掴めない。
やっぱり苦手だこの人…
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