Memorys ‐過ぎ去りし時間‐
__相澤 蓮花side__

 「私に今後何があっても関わらないで。会っても他人のフリをしてほしい」

驚いて何も言えない間に握っていた手を離された。

今までどんなに私が我が儘言おうと、
どんなに迷惑かけようとそんな言葉を聞いたことがなかった。

さっき止まったばかりの涙が頬を伝う。
泣いたら刹那が困るのは分かっているのに止めることができない。

刹那は悲しそうに目を伏せて謝る。

刹那が悪いわけじゃないのに何度も彼女は謝る。
それが辛くて私はまた泣いてしまう。

こんなお願い聞きたくない。
だってあんなこと言うだなんてそれなりの理由があるはずだ。

 「何で…そんなお願いするの?」

刹那は何も答えない。

でも、私はわかったような気がした。
さっきの光景を思い出す。
悲惨なことになっている机、周囲の冷たい視線に馬鹿にしたような笑い声。

私を巻き込まないためなの?
そんなの私は気にしたいのに…
どうして刹那はいつも独りで抱え込んじゃうの?

 「私の我が儘たまには聞いてくれない?」

刹那は滅多にお願い何てしない。
こんなの我儘だなんて言わない…

あの言葉を聞くまでは頼られているようで嬉しかったのに…

 「蓮花、お願い」

刹那の笑みは美しくて儚く見える。
このまま消えてしまうんじゃないかと思わせるほどに。
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