Memorys ‐過ぎ去りし時間‐
”あの時”…
それは初めて彼女が秘密を打ち明けてくれた時だった。

体育の時間、刹那が急に倒れた。
そのまま救急車で運ばれ入院したことがあった。

その日、私は何もできなかった。
何が起きたのか分からなかった。

翌日、彼女に何が起きたのか知りたくて会いに行った。

病室に入れば、刹那は点滴が繋がれた腕を見えないようにそっと隠した。

私を椅子に座るよう促し、話してくれた。
震える声に緊張感が走る。

 『私、心臓が普通の人より弱いんだ。
 急に倒れてびっくりしたでしょう?ごめんね』

そう言って儚く笑う刹那。

何て言葉を掛ければいいのか分からなかった。
軽率な言葉で彼女を傷つけてしまいうんじゃないか…

刹那は困った顔をしてまた笑った。

暫くして、そっと口を開く。

「何で今まで言ってくれなかったの?」

そう彼女に問えば、目を伏せて言った。

 『心配されたくなかったの。周りの人みたいに哀れんで欲しくなかったから…
蓮花には普通に接して欲しかったの』

 『いつ止まるのかも分からないんだ…』

彼女はそう言って心臓に手を当てた。


同い年の子が、”死”のことを考えているのが怖くなった。

今まで気づかなくて、
そんな大事なことを話してくれた刹那を思わず抱きしめた。

その時だけだ。
刹那が私の前で涙を見せたのは。

刹那を隣で支えていたいのに、今はそれが叶わない。
また何も出来ないなんて嫌だ。
私は私なりに彼女を支えるんだっ!

私は頬をパンと叩いて気合を入れなおした。


  __相澤 蓮花side END__
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