Memorys ‐過ぎ去りし時間‐
立ち上がったところで、もう一人の人物が現れる。

思わず舌打ちしそうになったが我慢する。
更に目をつけられたくない。

 「聖風、そろそろ時間ですよ。
  勝手にフラッとどこかにいかないでくださいよ」

刹那に気づいたもう1人の男は、眉間に皺を寄せた。
彼のトレードマークともいえる眼鏡を押し上げる。

 「1-B、一条刹那さんですね。
こんな所で何をやっているのです?HRはあと数分で始まりますよ」

こちらが喋る隙を与えずに、スラスラと言葉を並べられる。
この人が副会長なのだとしたら更に面倒くさいことになってしまったじゃないか…

 「すみません、すぐに戻ります。
教えていただきありがとうございました。では失礼します」

お辞儀をし、少し早足で彼らを横切れば、

 「待て、俺の問いにまだ答えていない」

…は?
さっき答えたじゃないか。

 「休憩しているだけのように見えなかったと俺は言っているんだ」

 「それはどういう意味で?」

思わず聞き返してしまい、会長が意地悪く笑ったのが見えた。

…この人性格かなり悪いな

黙って去るべきだったか…

 「…失礼します」

何を考えているか読めない以上、下手に聞けない。

再び歩き出せば、彼は何も言ってはこなかった。

彼は何が言いたかったのか…
確かに私は休憩していただけだ。
なのに、どうして彼は違うと言ったのだろうか

彼に、私はどう見えていたのだろうか…

分からない…

こんなことになるなら図書室でも行けばよかった。
何で中庭に来ちゃったんだろう…
寧ろ来なければよかった

思わずため息がこぼれたが、仕方がない。
これ以上何もないことを願いながら教室に戻ったのだった。
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