可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
閑話 男たちの想い★相川視点★
散々な出張から帰ってきて、デスクワークをこなしていると、部長に呼ばれた


「相川、この書類を秘書室の木崎課長に持って行ってくれるか」


言った本人はシタリ顔
聞いた同僚は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔
言われた俺は、しかめっ面


「何の書類ですか?」
「出張の報告書」
「何故、木崎課長に?その報告書は吉田社長に提出するのでは?」
「今日は、社長秘書の田村室長がいないらしい。だから、課長に。何か伝言があったら報告してくれ」


どうせ直接話したいんだろ?と言わんばかりの顔
俺も木崎課長とは話をしなければと思っていたので、部長の言う通りにすることにした

ついでに三浦常務の事も探ってこいってことだろうな

そんな事を考えながら、部長から書類を受け取り、部屋を出ようとすると、部長に呼び止められた


「相川、プライベートな事までは報告しなくてもいいからな」


楽しそうに言ってるんじゃねえよと思いつつ「分かりました」と言って部屋を出て秘書室がある16階へと向かった


秘書室に入って真っ直ぐ木崎課長の席へ行き、皆川部長からの書類を差し出した
その間、秘書室の他のメンバーの視線と言ったらない


「皆川部長から吉田社長への報告書です。今日は田村室長が不在ということなので、木崎課長に渡しておくようにと言われました」
「分かりました。今すぐチェックした方がいいですか?」
「そうですね。出来ればお願いします」
「じゃ、あちらの打ち合わせ室に行きましょう」


木崎課長の後に続いて、打ち合わせ室に入る


「まさか、こんなに早く乗り込んで来るとは思わなかったな、相川くん。どうぞ、座ってください」
「皆川部長の指示に従っただけです」


皆川部長からの書類を机の上に置いて、俺を見据えてふっと笑った


「で?何を聞きたいんですか?」
「三浦常務は何か企んでるんですか?」


木崎課長はため息をつきながら、分厚い書類を差し出した


「俺が知り得る限りの三浦常務の悪行三昧の資料だ。皆川部長に、何かあった時には遠慮なくこれを使ってくれと伝えておいてくれないか。田村室長は知らないが、吉田社長は承知してる」
「分かりました。伝えておきます」


書類を受け取ると、木崎課長は俺をジッと見た
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