可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
私が好きなのは
やっと週末

なんとか仕事を終えて、会社を出る
スマホを取り出すと、相川くんからメッセージが届いていた


『今日は直接家に来てください』

いつもはあの居酒屋なのにどうしたんだろうと思いながら、相川くんの言う通り、家に行くことにした


「お疲れさまです。奈南美さん」
「お疲れさま。どうしたの?直接家に来てって、何かあった?」
「2人だけで話したかったんです。奈南美さん、お腹空いてるでしょ?あの居酒屋の大将に我が侭言って、テイクアウトお願いしたんで食べましょ」


リビングに入ると、テーブルには私の好きなメニューが並んでいた


「大将、文句言ったでしょ」
「はい。今度はちゃんと店に来いって言われました」


苦笑する相川くんを見て私も笑った
そして、相川くんに抱きついて背中に手を回した

「奈南美さん?どうしたんですか?」


そう言いながらも優しく抱き締めてくれる相川くん


「今週は色々あって、疲れた」
「そうですね。俺も色々ありました」


相川くんを見上げると軽くキスをされた


「着替えて来てください」
「うん」


私は寝室にに入って、クローゼットを開けた
相川くんはクローゼットの1部を私のスペースにしてくれている
そこには初めてここに泊まった時から私の荷物が少しずつ増えていった
部屋着に着替えて、髪の毛をおろして1つにまとめた


「コンタクトも取っちゃえ」

コンタクトを取って、眼鏡をかけてリビングへ行った


「お待たせ。ああ、お腹空いた」
「俺も腹ペコです」


そうして2人でテーブルについて、缶ビールで乾杯した


「やっぱり美味しい。大将のもつ煮込み」
「そうですね。ねえ、奈南美さん?」
「何?」
「あれから木崎課長と何か話しました?」
「ううん。話してない」
「俺は話しました。木崎課長と」
「はあっ?何で?」


私がびっくりしていると、相川くんは話し始めた
出張から帰った日に秘書室で木崎課長と話したことを


「……という訳で、木崎課長は本気だそうです」
「ちょっと待って、木崎課長がフランス支社に行ったのって……」
「6年ぐらい前ですよ。その頃の奈南美さんは?」
「総務部からマーケティング部に異動になった頃だ」
「木崎課長はマーケティング部からフランス支社へ転勤です」
「一緒の時期があったの?」
「覚えてないんですか?」


どんなに思い出そうとしても、思い出せない


「もっと自分がモテる事を自覚してくださいね。奈南美さん」


相川くんは私の手を握って溜め息をついた


「奈南美さんが覚えてなくても、木崎課長は本気です。これから木崎課長は奈南美さんに本気でぶつかって来ると思います。だから……恐いんです」
「……恐い?」


相川くんは自嘲気味に笑った


「木崎課長は皆川部長と似たタイプです」
「相川くん……」
「自信がないんですよ、俺は。情けないことに」


そう言って俯く相川くんを見て、どうしようと思った


自信がないなんて……
何でそんなこと言うの?


私は相川くんの側に行って、抱き締めた
相川くんも私をきつく抱き締める


「奈南美さん?」
「なあに?」
「俺のこと、好きですか?」


そうだ、言ってなかったね


「好きよ」


相川くんが驚いた顔をして私を見る


「私は、相川くんが、大好き」


ごめんね、不安にさせて
大事なこと言わないで、ごめんね
私は相川くんにキスをした


「まだ、自信ない?」
「ちょっとだけ、自信がつきました」


相川くんがやっと笑ってくれたので、私も笑った


「食べよ?大将がせっかく作ってくれたのに、ちゃんと食べなきゃ」
「はい」


そうしてまた食べはじめた
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