可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
脱衣場に入ると、やっと私を降ろしてくれた


「眼鏡はここに置いときますね」


ヒョイと眼鏡をとられて、どこかに置かれた
私の視力は、裸眼では0.1もないため眼鏡無しでは全然見えない


「ちょっと、相川くん。どこに置いたの?」
「大丈夫です。後でちゃんと返してあげますから」
「そういう問題じゃ……」


そんなことを言っているうちに、私の服を脱がそうとするので、私は慌てて相川くんの手を掴んだ


「……自分で出来るから」


観念してそう言うと、相川くんは私の額にキスをして言った


「先に入ってますから」


そうして素早く脱いで、風呂場へと行ってしまった
中からシャワーの音がするのを聞いて、私も服を脱いで風呂場のドアを開けると、腕を捕まれ中に引き込まれた
文句を言おうと口を開こうとすると、相川くんの唇で塞がれた
最初から噛みつかれるようなキスで、息をするのが追いつかない
相川くんのキスにになんとか応えながら、相川くんの背中に腕を回した


散々快感を与えられた後は、まるで全力疾走した後のようで、身体を動かすのも嫌だった


「奈南美さん?大丈夫?」
「……大丈夫じゃない」
「お湯に浸かりましょうか」
「うん」


湯船に入ると、相川くんは後ろから私を抱き抱えるように、2人でお湯に浸かった


「寒くないですか?」
「うん……温かい。ちょっと恥ずかしいけど」
「さっきまでもっと恥ずかしいことしてたのに?」
「もうっ!」


そうして2人で笑って、私は完全に相川くんに体を預けた
相川くんも私を優しく包んでくれる


「それにしても、お風呂広いよね。2人で入っても平気だもんね」
「もともと家庭向きの賃貸マンションだからかな?俺はただ会社に近かったから借りたんですけど」
「そうなんだ」


ねえ、今までにも、ここで誰かと一緒に入ったことあるの?


そんな事を考えていると、相川くんが首筋にキスをした


「何考えてるんですか?」
「な、何も……」


相川くんはふっと笑って言った


「安心してください。この家に来たことがある女は、奈南美さんだけですから」
「えっ?」


何で考えていることが分かったんだろうと、振り向いたら口に軽くキスをされた


「本当に?」
「はい」
「相川くんなら彼女いたでしょう?」
「それは、誉め言葉として受け取っておきます」


そう言って爽やかな笑顔を浮かべて話してくれた


相川くんは25才から28才まで海外の支社を転々としていて、彼女なんか作る暇がなかったらしい
日本に帰ってきて、彼女が出来たはいいが、29才の時に皆川部長が上司になってから、仕事が忙しすぎて自然消滅


「という訳で、奈南美さんは俺にとって、久しぶりの彼女なんです」
「そう、なんだ」


ちょっと安心していると、私を抱き締めている腕に力がこもった


「もう、寒くない?」
「うん。温もったよ」
「じゃ、ベッドに行きましょうね。奈南美さん」
「はっ?」


相川くんは自分が立ち上がると同時に、私も立ち上がらせて、脱衣場へと移動した


「ちょっと、相川くん!まだ体洗ってない!」
「どうせ今から汗をかくんです。後でまた風呂に入ればいいですよ」


そうして、申し訳程度にバスタオルで体を拭かれて、今度はお姫様抱っこ


「相川くん!私の眼鏡は!?」
「キスするのに邪魔だから、返さない」
「ちょっと……きゃっ!」


ベッドに降ろされると、相川くんが私に跨がって両手をベッドに縫い止められた


「相川くん……?」
「いい眺め」


口角を上げて笑う彼の顔は、再び私の体の奥を熱くするのに十分だった
< 20 / 93 >

この作品をシェア

pagetop