可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
初デート
会社に戻ってマーケティング部がある14階に戻ろうと、閉まろうとしているエレベーターに、滑り込みで乗り込んだ
そこには、タイミングがいいのか悪いのか、皆川部長と秘書の相川くんが先に乗っていて、エレベーターの中には3人だけだった
2人が戻る海外事業部は15階だ
皆川部長は奥にいて、相川くんは手前のボタンの前にいた
私は「お疲れ様です」と言いながら、隅の方に立った
エレベーターが動き出すと皆川部長に話しかけられた
「進藤係長。先日は妻に見舞いを持って来てくれて、ありがとう」
「いえ、もう大分怪我も良くなってるみたいですね」
部長の奥さん、祥子さん(私は祥ちゃんと呼んでいるのだが)この前、事故に遭い足を捻挫して、暇を持て余しているというので、推理小説をお見舞いに持って行ったのだ
「お陰様で、もう大丈夫だよ」
部長も安心しているようだ
「そうだ、妻が『最近、奈南ちゃん何かいい事あったみたいだよ』って言ってたけど、何か心当たりある?」
えっ?と思って部長を見ると、いたずらっぼく笑っていた
相川くんをチラッと伺うと、向こうもこっちを伺っていた
どこからか堪えたような笑い声が聞こえてくる
この人、こんなキャラだった?
エレベーターが14階に着いて降りたところで、皆川部長に呼び止められた
「今日はうちの秘書を定時で上がらせるので、係長も定時で上がってやって」
そう言って、相川くんの肩をポンと叩いて、自ら扉を閉めた
扉がが閉まる直前の相川くんは、片手で顔を覆っていた
私も間抜けな顔をしていたに違いない
信じられない、あの人完全に面白がってる
ため息をつきながら席に戻ると、たくさんのメモが机に残されている
それを見て絶対定時に上がってやると、仕事に没頭した
定時をちょっと過ぎたが、早く帰ることが出来た
会社を出て、電話をかけた
「もしもし?奈南美さん?仕事終わりました?」
「うん。今会社を出たところ。相川くんは?」
「今、奈南美さんの目の前です」
「えっ?わっ!」
電話に気を取られて前を見ていなかったが、本当に目の前に相川くんがいた
ははっと笑って、電話を切る相川くん
本当に爽やかな人だな……
「お疲れ様です、奈南美さん。じゃ行きましょうか」
そう言って、私の手を取って歩き出した
ここは、会社の目の前
はっきり言って、会社の多くの人間が私達を見ていた
「ちょ、ちょっと、相川くん、みんな見てるから、手、離して」
「何か不都合でも?」
「だって今日、若い子に言われたばかりなの。『あんなだから皆川部長にも振られるんだ』って。なのに……」
へぇと言いながら、私を見下ろした
「じゃ、そんな人達に見せつけないと。今、進藤係長が付き合ってるのは、俺だってことを」
口角を上げて笑う年下の彼を、信じられないという顔をして見上げた
「そんなこと!あなたの立場が!」
自分の上司の元カノと付き合っているのだ
その事が会社で広まれば、彼に対して良からぬ噂をたてる人間もいるだろう
「大丈夫です。でも、奈南美さんの方が大変かも?女の噂ほど怖いものはないし。すいません。これからは気をつけますね」
「いや、私は大丈夫。もう、慣れてるし。色々と」
皆川部長と付き合ったり別れたり、係長に昇進したりと、色々言われていることは知っている
私が俯いていると、相川くんが私を呼んだ
「奈南美さん」
私が見上げると、爽やかな笑顔の相川くん
「これからは、俺が守りますから」
一気に顔が真っ赤になった
そんな私を見て、彼は言う
「奈南美さん、可愛い」
そして非常に目に毒な爽やかな笑顔を浮かべて、私の手を取ったまま歩き続けた
そこには、タイミングがいいのか悪いのか、皆川部長と秘書の相川くんが先に乗っていて、エレベーターの中には3人だけだった
2人が戻る海外事業部は15階だ
皆川部長は奥にいて、相川くんは手前のボタンの前にいた
私は「お疲れ様です」と言いながら、隅の方に立った
エレベーターが動き出すと皆川部長に話しかけられた
「進藤係長。先日は妻に見舞いを持って来てくれて、ありがとう」
「いえ、もう大分怪我も良くなってるみたいですね」
部長の奥さん、祥子さん(私は祥ちゃんと呼んでいるのだが)この前、事故に遭い足を捻挫して、暇を持て余しているというので、推理小説をお見舞いに持って行ったのだ
「お陰様で、もう大丈夫だよ」
部長も安心しているようだ
「そうだ、妻が『最近、奈南ちゃん何かいい事あったみたいだよ』って言ってたけど、何か心当たりある?」
えっ?と思って部長を見ると、いたずらっぼく笑っていた
相川くんをチラッと伺うと、向こうもこっちを伺っていた
どこからか堪えたような笑い声が聞こえてくる
この人、こんなキャラだった?
エレベーターが14階に着いて降りたところで、皆川部長に呼び止められた
「今日はうちの秘書を定時で上がらせるので、係長も定時で上がってやって」
そう言って、相川くんの肩をポンと叩いて、自ら扉を閉めた
扉がが閉まる直前の相川くんは、片手で顔を覆っていた
私も間抜けな顔をしていたに違いない
信じられない、あの人完全に面白がってる
ため息をつきながら席に戻ると、たくさんのメモが机に残されている
それを見て絶対定時に上がってやると、仕事に没頭した
定時をちょっと過ぎたが、早く帰ることが出来た
会社を出て、電話をかけた
「もしもし?奈南美さん?仕事終わりました?」
「うん。今会社を出たところ。相川くんは?」
「今、奈南美さんの目の前です」
「えっ?わっ!」
電話に気を取られて前を見ていなかったが、本当に目の前に相川くんがいた
ははっと笑って、電話を切る相川くん
本当に爽やかな人だな……
「お疲れ様です、奈南美さん。じゃ行きましょうか」
そう言って、私の手を取って歩き出した
ここは、会社の目の前
はっきり言って、会社の多くの人間が私達を見ていた
「ちょ、ちょっと、相川くん、みんな見てるから、手、離して」
「何か不都合でも?」
「だって今日、若い子に言われたばかりなの。『あんなだから皆川部長にも振られるんだ』って。なのに……」
へぇと言いながら、私を見下ろした
「じゃ、そんな人達に見せつけないと。今、進藤係長が付き合ってるのは、俺だってことを」
口角を上げて笑う年下の彼を、信じられないという顔をして見上げた
「そんなこと!あなたの立場が!」
自分の上司の元カノと付き合っているのだ
その事が会社で広まれば、彼に対して良からぬ噂をたてる人間もいるだろう
「大丈夫です。でも、奈南美さんの方が大変かも?女の噂ほど怖いものはないし。すいません。これからは気をつけますね」
「いや、私は大丈夫。もう、慣れてるし。色々と」
皆川部長と付き合ったり別れたり、係長に昇進したりと、色々言われていることは知っている
私が俯いていると、相川くんが私を呼んだ
「奈南美さん」
私が見上げると、爽やかな笑顔の相川くん
「これからは、俺が守りますから」
一気に顔が真っ赤になった
そんな私を見て、彼は言う
「奈南美さん、可愛い」
そして非常に目に毒な爽やかな笑顔を浮かべて、私の手を取ったまま歩き続けた