可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
「まさか、神崎係長が結婚するなんて……彼女は居るだろうなとは思ってたけど」
「ですね。流石にびっくりしました」


私達は今、相川くんの家で飲み直している


あの後、神崎係長の結婚宣言で騒然となり、今度は神崎係長が揉みくちゃにされていた
私は相川くんと呆然とその様子を見ていたのだが、神崎係長が私達に顎で『帰っていいぞ』と合図してくれて、私達はそーっと2人で抜け出した


「どんな人なんだろうね、神崎係長の婚約者」
「俺、前に聞いたことあるんですけど、幼なじみで結構年下で付き合いも長いみたいですよ」
「じゃ、フランスに行ってた時も別れなかったの?」
「らしいですよ」
「凄いね、しかも結構年下って……」
「でも、部長と祥子さんも6才離れてますからね」
「そう言えばそうか」


おつまみを食べながらワインを飲んでいると、頬に柔らかいものが触れた
驚いて顔を向けると、相川くんが優しい笑顔で見つめていた


「な、何?」


私の言葉には答えてくれず、今度は唇にキスをする
角度を変えながらどんどん深くなっていくキスに体の力が抜けていく
やっと唇を解放されたと思ったら、きつく抱き締められた
しばらくそうされていると、耳元で囁いた


「よかった。上手くいかなかったら、どうしようかと思ってた……」


それは、今回の件で初めて聞いた相川くんの弱音だった
私も相川くんをぎゅっと抱き締めた


「ありがとう、守ってくれて。初めて仕事してるとこ見たけど、格好良かったよ。それに、色々聞いた……」
「分かったから、もう喋らないで」


私の言葉を遮った相川くんは、キスをしながら私を抱き上げ、寝室へ移動してベッドへと倒れ込んだ
今日1日、眼鏡で過ごしていたので、それを取られた
そして、両手で頬を包まれた


「もうあんな格好、人前でするんじゃない」


え?と目を丸くして相川くんを見ると、真剣な眼差しで私を真っ直ぐ見ている


「約束して、奈南美。自分を危険に晒すようなことはしないって、俺に誓って」


涙が溢れて声にならなかった
確かに今日、あの服装で三浦常務のに会うことは、危険な事だと分かっていた
でもそれが、三浦常務を叩き落とす材料になればと、無理をしてでも女を武器にするような姿で出勤した
結果的に良い方へ転がったが、自分が危険だということは、承知の上だった


ただ泣いている私に相川くんは苦笑して、涙を拭ってくれた


「ちゃんと返事して、奈南美。もうしないね?」
「……はい、もうしません」
「良く出来ました」


相川くんはにっこり笑って、キスをしながら、私の服を脱がしていった
< 40 / 93 >

この作品をシェア

pagetop