可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
新たなスタート
K貿易と三浦常務の一件が解決してほどなく、臨時株主総会が開かれ、三浦常務は解任された
そしてちょっとした組織改正が行われ、人事異動もあった
Kカンパニーと業務提携を結んだ事で韓国支社を拡大
韓国支社長に海外事業部第1課の渋谷課長が、支社次長に第3課の木村課長が就き、藤川さんと清水さんが転勤
S商事のアメリカでの事業を協力するために、木崎課長がアメリカ支社のマーケティング部部長に就き、海外事業部第3課の橋本くんが転勤
「相川くんが言い出したことなのに、何で俺が行くんだか」
と相川くんは木崎課長に嫌みを言われたらしいが、木崎課長の顔は晴々としていたそうだ
マーケティング部の本田部長の定年退職に伴い、海外事業部第2課の小野課長がマーケティング部部長に昇進
そして海外事業部第1課課長に相川くん、第2課課長に神崎係長、第3課課長に永井沙耶さんがそれぞれ昇進し、第3課には宮本くんが異動することになった
永井さんははじめ断ったらしいが
「やる前から出来ないなんて言うんじゃない。僕はそんな部下を育てた覚えはない」
と皆川部長の一声で、決心したらしい
その皆川部長はと言うと、取締役に就任した
海外事業部部長と言う肩書きは変わらないため、やることは変わらないと本人はあっけらかんとしていたが、F社の史上最年少の取締役就任には間違いなかった
相川くんはやっと秘書兼務を解かれてホッとしていた
そして私はと言うと……
「秘書室課長、ですか?」
「そう。田村室長は三浦常務の遠縁に当たる人でね、早期退職を促したら受けてくれたんだ」
「と言うと?」
「他に室長に相応しい人材がいなくてね、進藤くんには室長不在の課長。事実上、秘書室のトップだね」
「は?」
「だから、社長付き。つまり、私付きの秘書をやってもらうことになる」
「いや、それは」
「受けてくれるね?進藤係長。いや、進藤次期課長」
社長直々にそんな事を言われて断れるサラリーマンがいたら、教えて欲しいくらいだった
そして今日は異動初日
内示が出てからほぼ1ヶ月
私は、マーケティング部と秘書室の引き継ぎに明け暮れて、はっきり言って疲れていた
「進藤課長、これからよろしく。このデータを明日までにまとておいてくれるか。明日の会議で必要なものだから。それとしばらくは私と行動を共にしてもらうから。君も顔を覚えてもらわないとね。今日は1時間後に出掛けて、帰りは夕方になる。だから、申し訳ないけど今日は残業になるね。ああでも、部下を効率良く使うのも君次第だから……て言うか、顔が疲れてるけど大丈夫か?」
そうして結構な量のデータを私に渡して、にっこり笑う吉田社長
「……この顔は元からです。早速このデータをまとめておきます。さっと目を通したら部下に指示を出して手伝ってもらいますからご心配無く。では時間がないのでこれで失礼します」
くるっと踵を返して社長室を出ようとすると、呼び止められた
「来月、創立記念パーティーがあるのを知ってるね」
「はい」
「取締役以上は夫婦同伴が原則なんだが……」
私は小さく溜め息をついた
「皆川部長、ですか?」
「説得、頼めるか?友達なんだろ?皆川のカミさんと」
「確かに親友です。ですが、皆川部長の奥様は出産後間もないですから。難しいでしょうね」
「そうか……」
「でも、とりあえず皆川部長に言ってみます」
「頼む」
頭を下げて社長室を後にした
席に着いて、社長から渡されたデータにさっと目を通した
秘書室のメンバーは、男性陣が、矢野隼人(30)、名村雅司(29)、宇佐美 亮(26)、女性陣が、倉橋佳奈(31)、佐藤晴香(25)、手塚郁子(23)の6人
これは1人では無理だと判断して、誰かに手伝ってもらおうと顔を上げると、全員私を見ていた
「な、何?」
私が聞くと、倉橋さんがスッと私の前に歩いてきた
「何でも命令してください、進藤課長」
「え?」
「私達は全員、進藤課長を歓迎してますから」
驚いて皆を見ると、笑顔で頷いていた
「皆、三浦常務の事うんざりしてたから……だから、進藤課長には感謝してるんです」
「あなた達……」
「このデータ手分けしてまとめておきますね」
そうして倉橋さんは私からデータを取り上げて、皆の所に戻って行った
私はしばらく唖然ととしていたけど、ふっと笑って言った
「ありがとう。これからよろしくお願いします」
皆、はいと言ってくれた
ただそれが嬉しかった
そしてちょっとした組織改正が行われ、人事異動もあった
Kカンパニーと業務提携を結んだ事で韓国支社を拡大
韓国支社長に海外事業部第1課の渋谷課長が、支社次長に第3課の木村課長が就き、藤川さんと清水さんが転勤
S商事のアメリカでの事業を協力するために、木崎課長がアメリカ支社のマーケティング部部長に就き、海外事業部第3課の橋本くんが転勤
「相川くんが言い出したことなのに、何で俺が行くんだか」
と相川くんは木崎課長に嫌みを言われたらしいが、木崎課長の顔は晴々としていたそうだ
マーケティング部の本田部長の定年退職に伴い、海外事業部第2課の小野課長がマーケティング部部長に昇進
そして海外事業部第1課課長に相川くん、第2課課長に神崎係長、第3課課長に永井沙耶さんがそれぞれ昇進し、第3課には宮本くんが異動することになった
永井さんははじめ断ったらしいが
「やる前から出来ないなんて言うんじゃない。僕はそんな部下を育てた覚えはない」
と皆川部長の一声で、決心したらしい
その皆川部長はと言うと、取締役に就任した
海外事業部部長と言う肩書きは変わらないため、やることは変わらないと本人はあっけらかんとしていたが、F社の史上最年少の取締役就任には間違いなかった
相川くんはやっと秘書兼務を解かれてホッとしていた
そして私はと言うと……
「秘書室課長、ですか?」
「そう。田村室長は三浦常務の遠縁に当たる人でね、早期退職を促したら受けてくれたんだ」
「と言うと?」
「他に室長に相応しい人材がいなくてね、進藤くんには室長不在の課長。事実上、秘書室のトップだね」
「は?」
「だから、社長付き。つまり、私付きの秘書をやってもらうことになる」
「いや、それは」
「受けてくれるね?進藤係長。いや、進藤次期課長」
社長直々にそんな事を言われて断れるサラリーマンがいたら、教えて欲しいくらいだった
そして今日は異動初日
内示が出てからほぼ1ヶ月
私は、マーケティング部と秘書室の引き継ぎに明け暮れて、はっきり言って疲れていた
「進藤課長、これからよろしく。このデータを明日までにまとておいてくれるか。明日の会議で必要なものだから。それとしばらくは私と行動を共にしてもらうから。君も顔を覚えてもらわないとね。今日は1時間後に出掛けて、帰りは夕方になる。だから、申し訳ないけど今日は残業になるね。ああでも、部下を効率良く使うのも君次第だから……て言うか、顔が疲れてるけど大丈夫か?」
そうして結構な量のデータを私に渡して、にっこり笑う吉田社長
「……この顔は元からです。早速このデータをまとめておきます。さっと目を通したら部下に指示を出して手伝ってもらいますからご心配無く。では時間がないのでこれで失礼します」
くるっと踵を返して社長室を出ようとすると、呼び止められた
「来月、創立記念パーティーがあるのを知ってるね」
「はい」
「取締役以上は夫婦同伴が原則なんだが……」
私は小さく溜め息をついた
「皆川部長、ですか?」
「説得、頼めるか?友達なんだろ?皆川のカミさんと」
「確かに親友です。ですが、皆川部長の奥様は出産後間もないですから。難しいでしょうね」
「そうか……」
「でも、とりあえず皆川部長に言ってみます」
「頼む」
頭を下げて社長室を後にした
席に着いて、社長から渡されたデータにさっと目を通した
秘書室のメンバーは、男性陣が、矢野隼人(30)、名村雅司(29)、宇佐美 亮(26)、女性陣が、倉橋佳奈(31)、佐藤晴香(25)、手塚郁子(23)の6人
これは1人では無理だと判断して、誰かに手伝ってもらおうと顔を上げると、全員私を見ていた
「な、何?」
私が聞くと、倉橋さんがスッと私の前に歩いてきた
「何でも命令してください、進藤課長」
「え?」
「私達は全員、進藤課長を歓迎してますから」
驚いて皆を見ると、笑顔で頷いていた
「皆、三浦常務の事うんざりしてたから……だから、進藤課長には感謝してるんです」
「あなた達……」
「このデータ手分けしてまとめておきますね」
そうして倉橋さんは私からデータを取り上げて、皆の所に戻って行った
私はしばらく唖然ととしていたけど、ふっと笑って言った
「ありがとう。これからよろしくお願いします」
皆、はいと言ってくれた
ただそれが嬉しかった