可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
告白
週末までは、本当に忙しかった
創立記念パーティーの準備や、社長の外回りの同行
とにかく、息つく暇もないくらいの忙しさ
金曜日の夜帰り着いたのは、20時を過ぎていた
秘書室に異動になってからというもの、相川くんより早く帰った試しがなく、余りにも疲れていたので、帰ったらご飯食べてお風呂に入って速攻寝るという生活で、週末の予定も聞いていなかった
「ごめん相川くん。明日ってどこに行くの?」
「奈南美さん疲れてるから、ちょっとゆっくり出来るとこに。どうせなら1泊しようかと思って」
「1泊!?」
「そう。もう予約してあるから、楽しみにしてて」
相川くんはそう言ってにっこり笑て、今日は早く寝ようと、結局どこに行くかは教えてくれなかった
次の日、なんとか起きて、半分眠りながら支度をして、軽くご飯を食べて車に乗せられたのが、お昼前
「着いたら起こすから、寝てていいよ」
その言葉に甘えて、助手席ですぐに眠ってしまった
「……南美さん、奈南美さん。起きて。着いたよ」
肩を揺さぶられて目を開けると、優しい笑顔の相川くんがいた
「着いたの?」
「うん。よく寝てたね。眼鏡ずれてる」
苦笑しながら、眼鏡を治してくれる相川くんをぼーっと見ていた
「……ありがとう」
「どう致しまして。さあ、行こう」
相川くんが車を降りるのを見て、私も降りる
そして目に飛び込んできた景色に思わず、うわぁと声を上げた
森の中にある、モダンでお洒落な旅館
まるでここだけ時が止まったような佇まい
時折吹く風に揺れる木漏れ日がとても綺麗だった
「気に入った?」
「うん。なんか、時が止まってるみたい」
「だからここにしたんだ」
「え?」
驚いて相川くんを見ると、にっこり笑っている
「最近の奈南美さん、時間に追われてたからね。ちょっとでもそういうの忘れてほしくて。さ、チェックインしないと。行くよ」
さっさと歩いていく相川くんの背中を見て、絶対照れてると思いながら、急いで駆け寄って、手を繋いだ
「ありがとう。凄く嬉しい」
「お礼言うの早くない?」
お互い笑い合って、旅館に入って行った
旅館の中に入って、お洒落な内装に見入っていると、相川くんがチェックインを済ませてくれた
「お連れの女性の方は、こちらにどうぞ」
「へっ?」
案内係の人にそう言われて、驚いて相川くんをみると、にこにこしながら、手を振っている
「2時間後、迎えにくるから」
「えっ?ちょっ……相川くん?」
訳が分からないまま、案内係の人に促されるまま着いて行くと、そこにはアロママッサージのスペースが
「宿泊の予約を戴いたときに、こちらの予約もされてましたが……聞いてらっしゃいませんでしたか?」
「はい。全く」
「じゃ、内緒にされていたんですね。とにかく癒されて欲しいからとおっしゃっていました」
「そうですか」
そうして案内されるままに、受付を済ませてアロマオイルを選び、たっぷり2時間のマッサージを受けた
それはもう気持ちよくて、最後の顔のマッサージを受けている時は、勿体無いことにほとんど夢の中だった
まだ夢見心地な気分でロビーに行くと、相川くんが待っていてくれた
「あ、奈南美さん。どうだった?」
「すっごく気持ちよかった。教えてくれれば良かったのに」
「その方が、喜んでくれるかと思って。じゃ、部屋に行こう。凄くいい部屋だったよ」
そう言って私の手を取り、歩いて行く
「そう言えば、今まで何してたの?」
「ちょっと歩いたところに、お店が並んでるところがあって、ブラブラしてた。明日一緒に行こう?」
「うん」
明日も楽しみだなと思いながら歩いていくと、離れの方に向かっていた
「ねえ相川くん」
「何?奈南美さん」
「部屋って離れ?」
「うん。ここの旅館は全部離れなんだ」
「そうなの!?」
「うん」
「あの……」
ん?と首を傾げて私を見る
「私、半分払うよ?宿泊代」
「そう言うと思った。着いたよ」
離れの棟に着いて、相川くんが鍵を開ける
中に入ると、和洋室になっていて露天風呂までついていた
「凄い。温泉だよね?」
「そうだよ」
私が部屋の中を見渡していると、相川くんはお茶を煎れてくれた
「奈南美さん、お茶どうぞ。夕食はここに運んでもらうから。あと2時間くらいあるな。先に温泉に入る?」
「ありがとう。そうだね、温泉入りたいかも……って、宿泊代!」
私がそう言うと、相川くんは吹き出した
「気にしないでいいよ。ここに来るのも俺が勝手に決めたし」
「気にするわよ!絶対高いでしょ、ここ!マッサージも!」
「まあ、それなりに?」
「だったら!」
「ちょっとは格好つけさせてよ。奈南美さん」
「え?」
驚いて相川くんを見ると、ちょっと照れたように笑う
「彼女が仕事で疲れてるのに、何も出来ないで情けないと思ってたんだ。だから、これくらいはさせてくれないかな?」
「相川くん……」
そんな事を思ってたなんて
「明日までだけど、一緒に現実逃避しよう?奈南美さん」
その言葉に笑ってしまった
現実逃避って……
「そんなに笑わなくてもいいだろ?」
「だって、現実逃避……相川くんが……」
「はいはい、分かりました。じゃあ俺、先に風呂に入ってるから、奈南美さんも後で来て」
え?と立ち上がる相川くんを見ると、私の頭を撫でて脱衣場に行ってしまった
創立記念パーティーの準備や、社長の外回りの同行
とにかく、息つく暇もないくらいの忙しさ
金曜日の夜帰り着いたのは、20時を過ぎていた
秘書室に異動になってからというもの、相川くんより早く帰った試しがなく、余りにも疲れていたので、帰ったらご飯食べてお風呂に入って速攻寝るという生活で、週末の予定も聞いていなかった
「ごめん相川くん。明日ってどこに行くの?」
「奈南美さん疲れてるから、ちょっとゆっくり出来るとこに。どうせなら1泊しようかと思って」
「1泊!?」
「そう。もう予約してあるから、楽しみにしてて」
相川くんはそう言ってにっこり笑て、今日は早く寝ようと、結局どこに行くかは教えてくれなかった
次の日、なんとか起きて、半分眠りながら支度をして、軽くご飯を食べて車に乗せられたのが、お昼前
「着いたら起こすから、寝てていいよ」
その言葉に甘えて、助手席ですぐに眠ってしまった
「……南美さん、奈南美さん。起きて。着いたよ」
肩を揺さぶられて目を開けると、優しい笑顔の相川くんがいた
「着いたの?」
「うん。よく寝てたね。眼鏡ずれてる」
苦笑しながら、眼鏡を治してくれる相川くんをぼーっと見ていた
「……ありがとう」
「どう致しまして。さあ、行こう」
相川くんが車を降りるのを見て、私も降りる
そして目に飛び込んできた景色に思わず、うわぁと声を上げた
森の中にある、モダンでお洒落な旅館
まるでここだけ時が止まったような佇まい
時折吹く風に揺れる木漏れ日がとても綺麗だった
「気に入った?」
「うん。なんか、時が止まってるみたい」
「だからここにしたんだ」
「え?」
驚いて相川くんを見ると、にっこり笑っている
「最近の奈南美さん、時間に追われてたからね。ちょっとでもそういうの忘れてほしくて。さ、チェックインしないと。行くよ」
さっさと歩いていく相川くんの背中を見て、絶対照れてると思いながら、急いで駆け寄って、手を繋いだ
「ありがとう。凄く嬉しい」
「お礼言うの早くない?」
お互い笑い合って、旅館に入って行った
旅館の中に入って、お洒落な内装に見入っていると、相川くんがチェックインを済ませてくれた
「お連れの女性の方は、こちらにどうぞ」
「へっ?」
案内係の人にそう言われて、驚いて相川くんをみると、にこにこしながら、手を振っている
「2時間後、迎えにくるから」
「えっ?ちょっ……相川くん?」
訳が分からないまま、案内係の人に促されるまま着いて行くと、そこにはアロママッサージのスペースが
「宿泊の予約を戴いたときに、こちらの予約もされてましたが……聞いてらっしゃいませんでしたか?」
「はい。全く」
「じゃ、内緒にされていたんですね。とにかく癒されて欲しいからとおっしゃっていました」
「そうですか」
そうして案内されるままに、受付を済ませてアロマオイルを選び、たっぷり2時間のマッサージを受けた
それはもう気持ちよくて、最後の顔のマッサージを受けている時は、勿体無いことにほとんど夢の中だった
まだ夢見心地な気分でロビーに行くと、相川くんが待っていてくれた
「あ、奈南美さん。どうだった?」
「すっごく気持ちよかった。教えてくれれば良かったのに」
「その方が、喜んでくれるかと思って。じゃ、部屋に行こう。凄くいい部屋だったよ」
そう言って私の手を取り、歩いて行く
「そう言えば、今まで何してたの?」
「ちょっと歩いたところに、お店が並んでるところがあって、ブラブラしてた。明日一緒に行こう?」
「うん」
明日も楽しみだなと思いながら歩いていくと、離れの方に向かっていた
「ねえ相川くん」
「何?奈南美さん」
「部屋って離れ?」
「うん。ここの旅館は全部離れなんだ」
「そうなの!?」
「うん」
「あの……」
ん?と首を傾げて私を見る
「私、半分払うよ?宿泊代」
「そう言うと思った。着いたよ」
離れの棟に着いて、相川くんが鍵を開ける
中に入ると、和洋室になっていて露天風呂までついていた
「凄い。温泉だよね?」
「そうだよ」
私が部屋の中を見渡していると、相川くんはお茶を煎れてくれた
「奈南美さん、お茶どうぞ。夕食はここに運んでもらうから。あと2時間くらいあるな。先に温泉に入る?」
「ありがとう。そうだね、温泉入りたいかも……って、宿泊代!」
私がそう言うと、相川くんは吹き出した
「気にしないでいいよ。ここに来るのも俺が勝手に決めたし」
「気にするわよ!絶対高いでしょ、ここ!マッサージも!」
「まあ、それなりに?」
「だったら!」
「ちょっとは格好つけさせてよ。奈南美さん」
「え?」
驚いて相川くんを見ると、ちょっと照れたように笑う
「彼女が仕事で疲れてるのに、何も出来ないで情けないと思ってたんだ。だから、これくらいはさせてくれないかな?」
「相川くん……」
そんな事を思ってたなんて
「明日までだけど、一緒に現実逃避しよう?奈南美さん」
その言葉に笑ってしまった
現実逃避って……
「そんなに笑わなくてもいいだろ?」
「だって、現実逃避……相川くんが……」
「はいはい、分かりました。じゃあ俺、先に風呂に入ってるから、奈南美さんも後で来て」
え?と立ち上がる相川くんを見ると、私の頭を撫でて脱衣場に行ってしまった