可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
彼と付き合いだして、まだそんなに経っていない
今日は付き合いだして初デートと言ってもいいだろう
そう、初デートなのだ
「まさか、初デートがこんな場所だとは……」
言った後で、あっと口を押さえた
「こんな場所はひでぇな、姉ちゃん。しっかし、健ちゃん。えらい別嬪な彼女連れて来たな」
豪快に笑いながら、この小汚い居酒屋の大将が、生ビールをドンと私達の目の前に置いた
カウンター席しかないこの店は、相川くんの行き着けらしい
「ありがとう、大将。奈南美さんって言うんだ」
「奈南ちゃんかい。可愛い名前じゃねえか」
「大将、お任せでお願い出来る?」
「おう!任せとけ!」
この2人のテンポについて行けず、ぼーっとしてたら相川くんがジョッキを持って私を見た
「奈南美さん、お疲れ様です」
私もジョッキを持って、カチンと合わせた
「お疲れ様。まさか爽やかなあなたの行き着けが、ここ……」
ヤバいと思って、口を押さえた
「すいませんね、初デートがこんな場所で。でも、味は保証します」
「そう?じゃ楽しみにしとこ」
「そうしてください。そう言えば、祥子さんに何か言ったんですか?」
「何かって。別に。ただ……」
「ただ……何ですか?」
「て言うか、あなたよ」
「俺!?」
その時の祥ちゃんとの会話を思い出した
「奈南ちゃん、なんかいいことあったでしょ?」
「え?何で?」
「相川さんからこの間連絡あって、『祥子さんが選んでくれた靴下のおかげで、いいことがありました』って言ってたもん」
ただそれだけの会話で、すぐに他の話題に移ったので、大して気にも止めていなかった
私と祥ちゃんが友達になったパーティーで、祥ちゃんが相川くんにお世話になったから、何かお礼をしたいと相談されたので「じゃ靴下がいいんじゃない?」と言って、一緒に選んだ
その靴下を相川くんが受け取った日に偶然会って「私も一緒に選んだんですよ」と言ったのだ
その時、相川くんは何を思ったのか分からないが「ご飯一緒にどうですか?」と誘われて、付き合うようになった
「それだけ?」
「うん。それだけ。祥ちゃん勘がいいから、それとなく部長に言ったのよ、多分」
「部長はただ、カマかけただけってことですか?」
「きっとね」
相川くんはため息をついた
すると、大将がドンと料理を置いた
「2人ともなんて顔してんだい。ほら、熱いうちに食べな!」
そう言って次の料理に取りかかった
「うわぁ。美味しそう。これモツ?」
「そう、俺のいち押し。大将のモツ煮込み。さ、奈南美さん食べて下さい」
一口食べると、なんとも言えない美味しさが広がった
「美味しい」
「でしょ?これとビールが最高なんです」
グビっとビールを飲んで、にっこり笑顔
これがまた、爽やかで……
私が見とれてると
「そんなに見つめないでくださいよ」
「み、見つめてなんか……」
「そう?残念」
肩をすくめる相川くん
やっぱり私、可愛くないな……
どんどん出てくる大将の料理
それはどれも美味しくて、自然に箸が進んだ
相川くんとも会話が弾んで、お酒も飲んだ
すごく楽しかった
お腹もいっぱいになって、彼が会計を済ませて、お店を出た
大将が「奈南ちゃん、またおいで!」と言ってくれた
「相川くん、ごちそうさま。すごく美味しかった」
「良かった。また来ましょうね」
にっこり笑って、手を繋いで歩いていた
「ねえ、奈南美さん?」
「何?」
「今日、金曜日ですよね」
「そうだね」
「明日、出勤します?」
「ん?しないよ」
そう言うと、彼は繋いでいる私の手の甲にキスをした
「奈南美さん、今日、俺の家に泊まりませんか?このまま帰したくない」
そう言われて手が震えた
相川くんがふっと笑ったのが分かった
「大事にしますから、そんなに震えないでください」
「あっ、ごめんなさい」
「来て、くれますか?」
私はコクンと頷いた
相川くんは良かったと言って笑った
それを見て、心に温かいものが広がって、それが嬉しかった
今日は付き合いだして初デートと言ってもいいだろう
そう、初デートなのだ
「まさか、初デートがこんな場所だとは……」
言った後で、あっと口を押さえた
「こんな場所はひでぇな、姉ちゃん。しっかし、健ちゃん。えらい別嬪な彼女連れて来たな」
豪快に笑いながら、この小汚い居酒屋の大将が、生ビールをドンと私達の目の前に置いた
カウンター席しかないこの店は、相川くんの行き着けらしい
「ありがとう、大将。奈南美さんって言うんだ」
「奈南ちゃんかい。可愛い名前じゃねえか」
「大将、お任せでお願い出来る?」
「おう!任せとけ!」
この2人のテンポについて行けず、ぼーっとしてたら相川くんがジョッキを持って私を見た
「奈南美さん、お疲れ様です」
私もジョッキを持って、カチンと合わせた
「お疲れ様。まさか爽やかなあなたの行き着けが、ここ……」
ヤバいと思って、口を押さえた
「すいませんね、初デートがこんな場所で。でも、味は保証します」
「そう?じゃ楽しみにしとこ」
「そうしてください。そう言えば、祥子さんに何か言ったんですか?」
「何かって。別に。ただ……」
「ただ……何ですか?」
「て言うか、あなたよ」
「俺!?」
その時の祥ちゃんとの会話を思い出した
「奈南ちゃん、なんかいいことあったでしょ?」
「え?何で?」
「相川さんからこの間連絡あって、『祥子さんが選んでくれた靴下のおかげで、いいことがありました』って言ってたもん」
ただそれだけの会話で、すぐに他の話題に移ったので、大して気にも止めていなかった
私と祥ちゃんが友達になったパーティーで、祥ちゃんが相川くんにお世話になったから、何かお礼をしたいと相談されたので「じゃ靴下がいいんじゃない?」と言って、一緒に選んだ
その靴下を相川くんが受け取った日に偶然会って「私も一緒に選んだんですよ」と言ったのだ
その時、相川くんは何を思ったのか分からないが「ご飯一緒にどうですか?」と誘われて、付き合うようになった
「それだけ?」
「うん。それだけ。祥ちゃん勘がいいから、それとなく部長に言ったのよ、多分」
「部長はただ、カマかけただけってことですか?」
「きっとね」
相川くんはため息をついた
すると、大将がドンと料理を置いた
「2人ともなんて顔してんだい。ほら、熱いうちに食べな!」
そう言って次の料理に取りかかった
「うわぁ。美味しそう。これモツ?」
「そう、俺のいち押し。大将のモツ煮込み。さ、奈南美さん食べて下さい」
一口食べると、なんとも言えない美味しさが広がった
「美味しい」
「でしょ?これとビールが最高なんです」
グビっとビールを飲んで、にっこり笑顔
これがまた、爽やかで……
私が見とれてると
「そんなに見つめないでくださいよ」
「み、見つめてなんか……」
「そう?残念」
肩をすくめる相川くん
やっぱり私、可愛くないな……
どんどん出てくる大将の料理
それはどれも美味しくて、自然に箸が進んだ
相川くんとも会話が弾んで、お酒も飲んだ
すごく楽しかった
お腹もいっぱいになって、彼が会計を済ませて、お店を出た
大将が「奈南ちゃん、またおいで!」と言ってくれた
「相川くん、ごちそうさま。すごく美味しかった」
「良かった。また来ましょうね」
にっこり笑って、手を繋いで歩いていた
「ねえ、奈南美さん?」
「何?」
「今日、金曜日ですよね」
「そうだね」
「明日、出勤します?」
「ん?しないよ」
そう言うと、彼は繋いでいる私の手の甲にキスをした
「奈南美さん、今日、俺の家に泊まりませんか?このまま帰したくない」
そう言われて手が震えた
相川くんがふっと笑ったのが分かった
「大事にしますから、そんなに震えないでください」
「あっ、ごめんなさい」
「来て、くれますか?」
私はコクンと頷いた
相川くんは良かったと言って笑った
それを見て、心に温かいものが広がって、それが嬉しかった