可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
そして、創立記念パーティーの日
その日は朝から忙しかった
家から直接パーティー会場のホテルに向かい、抜かりが無いかチェックして、あっという間にパーティーの時間
着替えを済ませて会場に戻ると、皆川部長と祥ちゃんがちょうど着いたところだった
「あ、奈南ちゃん」
私に気付いた祥ちゃんが、手を振りながらにっこり笑った
祥ちゃんは、エメラルドグリーンのパステルカラーのふんわりとしたドレスを着ていて、とても似合っていた
「今日はご無理を言って申し訳ありませんでした。そのドレスは部長が選んだの?」
「そうなの。私は奈南ちゃんが着てるみたいなのがよかったのに……」
私は、紺のタイトなドレスを着ていた
「祥子には、進藤みたいな服は似合わないよ」
「私もそう思うわよ。逆に私も祥ちゃんみたいな服は似合わないと思うもの」
私と部長の2人にそう言われて、口を尖らせている祥ちゃんを見ていると、自然と笑顔になるから不思議だ
「進藤課長」
そう呼ばれて振り返ると、手塚さんが駆け寄ってきた
「皆川部長、祥ちゃん。今日2人のサポートをする、秘書室の手塚です。分からないことがあったら、手塚に何でも聞いて下さい。手塚さん、こちらが、皆川部長の奥さんの祥子さん」
「はじめまして。秘書室の手塚郁子です。今日はよろしくお願いします」
2人に頭を下げる手塚さんに、皆川部長はよろしくと言っているのに対して、祥ちゃんはじっと見ていた
余りにも祥ちゃんがじっと見ているので、手塚さんは不安そうに私を見た
「祥子、どうかした?」
「ねえ、慎一郎さん?」
「何?」
「F社って、顔で採用してるの?」
「は?」
「だって、ハンサムさんと美人さんしかいないじゃない!慎一郎さんも、相川さんも、奈南ちゃんも!海外事業部の人達だってそうだったし、手塚さんも凄く可愛いわ?私だったら、絶対採用されてないわよ?きっと」
私と皆川部長は吹き出した
手塚さんは唖然として私たちを見ていたけど
「採用基準が顔なら、祥子もちゃんと採用されてるよ?」
「またそんな事言って……」
「僕が祥子に嘘ついたことあった?」
「でも」
相変わらず熱いわね、この2人
私が笑っていると、手塚さんが小さな声で言った
「進藤課長。私、パーティーが終わる頃にはのぼせてそうです。大丈夫でしょうか?」
「後は頼んだわよ」
苦笑している手塚さんの背中をポンと叩いたところで、宇佐美くんが飛んできた
「進藤課長!社長が『挨拶文の原稿がない!』って騒いでます!」
「あれだけ言ってたのに。部長、祥ちゃん、悪いけどこれで失礼します。手塚さん頑張って!宇佐美くん、社長はどこにいるの?」
慌ただしく部長達に頭を下げて、宇佐美くんと社長のところに向かった
「いやぁ、まさかスーツの内ポケットに入っていたとは……うっかりだね」
「全く人騒がせな」
「何か言ったかい?進藤課長」
「いいえ。私を呼ぶだけなら、余計な事を言わないでもらえますか?原稿が無くても、頭の中に入ってるでしょうに」
社長の控室で私は頭を抱えていた
全く悪びれもしてない社長の隣でニコニコしているのは、社長夫人の吉田貴子さん
社長とは大学時代の同級生らしい
「あなた、また悪い癖が出たわね。ごめんなさいね?進藤さん。この人、気に入った部下を苛めたくなっちゃうの」
「そんな事はない。本当に原稿が無いと思って、焦ったんだよ」
溜め息をついて社長に聞いた
「それで、私を呼んだのは何故ですか?早く会場に戻りたいのですが」
「もうすぐ来るはずなんだが……」
そう言って入口の方に目をやると、ノックが聞こえてドアが開いた
私は入ってきた人を見て、息が止まるかと思った
入って来たのは、相川くんと、進藤南美(みなみ)
私の母……いや、私を産んだだけの人だった
その日は朝から忙しかった
家から直接パーティー会場のホテルに向かい、抜かりが無いかチェックして、あっという間にパーティーの時間
着替えを済ませて会場に戻ると、皆川部長と祥ちゃんがちょうど着いたところだった
「あ、奈南ちゃん」
私に気付いた祥ちゃんが、手を振りながらにっこり笑った
祥ちゃんは、エメラルドグリーンのパステルカラーのふんわりとしたドレスを着ていて、とても似合っていた
「今日はご無理を言って申し訳ありませんでした。そのドレスは部長が選んだの?」
「そうなの。私は奈南ちゃんが着てるみたいなのがよかったのに……」
私は、紺のタイトなドレスを着ていた
「祥子には、進藤みたいな服は似合わないよ」
「私もそう思うわよ。逆に私も祥ちゃんみたいな服は似合わないと思うもの」
私と部長の2人にそう言われて、口を尖らせている祥ちゃんを見ていると、自然と笑顔になるから不思議だ
「進藤課長」
そう呼ばれて振り返ると、手塚さんが駆け寄ってきた
「皆川部長、祥ちゃん。今日2人のサポートをする、秘書室の手塚です。分からないことがあったら、手塚に何でも聞いて下さい。手塚さん、こちらが、皆川部長の奥さんの祥子さん」
「はじめまして。秘書室の手塚郁子です。今日はよろしくお願いします」
2人に頭を下げる手塚さんに、皆川部長はよろしくと言っているのに対して、祥ちゃんはじっと見ていた
余りにも祥ちゃんがじっと見ているので、手塚さんは不安そうに私を見た
「祥子、どうかした?」
「ねえ、慎一郎さん?」
「何?」
「F社って、顔で採用してるの?」
「は?」
「だって、ハンサムさんと美人さんしかいないじゃない!慎一郎さんも、相川さんも、奈南ちゃんも!海外事業部の人達だってそうだったし、手塚さんも凄く可愛いわ?私だったら、絶対採用されてないわよ?きっと」
私と皆川部長は吹き出した
手塚さんは唖然として私たちを見ていたけど
「採用基準が顔なら、祥子もちゃんと採用されてるよ?」
「またそんな事言って……」
「僕が祥子に嘘ついたことあった?」
「でも」
相変わらず熱いわね、この2人
私が笑っていると、手塚さんが小さな声で言った
「進藤課長。私、パーティーが終わる頃にはのぼせてそうです。大丈夫でしょうか?」
「後は頼んだわよ」
苦笑している手塚さんの背中をポンと叩いたところで、宇佐美くんが飛んできた
「進藤課長!社長が『挨拶文の原稿がない!』って騒いでます!」
「あれだけ言ってたのに。部長、祥ちゃん、悪いけどこれで失礼します。手塚さん頑張って!宇佐美くん、社長はどこにいるの?」
慌ただしく部長達に頭を下げて、宇佐美くんと社長のところに向かった
「いやぁ、まさかスーツの内ポケットに入っていたとは……うっかりだね」
「全く人騒がせな」
「何か言ったかい?進藤課長」
「いいえ。私を呼ぶだけなら、余計な事を言わないでもらえますか?原稿が無くても、頭の中に入ってるでしょうに」
社長の控室で私は頭を抱えていた
全く悪びれもしてない社長の隣でニコニコしているのは、社長夫人の吉田貴子さん
社長とは大学時代の同級生らしい
「あなた、また悪い癖が出たわね。ごめんなさいね?進藤さん。この人、気に入った部下を苛めたくなっちゃうの」
「そんな事はない。本当に原稿が無いと思って、焦ったんだよ」
溜め息をついて社長に聞いた
「それで、私を呼んだのは何故ですか?早く会場に戻りたいのですが」
「もうすぐ来るはずなんだが……」
そう言って入口の方に目をやると、ノックが聞こえてドアが開いた
私は入ってきた人を見て、息が止まるかと思った
入って来たのは、相川くんと、進藤南美(みなみ)
私の母……いや、私を産んだだけの人だった