可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
それからしばらくしてなんとか泣き止んだ
だってパーティー会場に戻らなきゃいけない
仕事だと自分に言い聞かせて、化粧を直し会場へ入ると、宇佐美くんが慌てた様子で駆け寄ってきた
「どうしたの?」
「あの、この資料なんですけど、足りなくなっちゃって……」
「ああ、これなら手塚さんが知ってるわね。あ、あそこにいる。ちょっと待ってて」
皆川部長夫妻と一緒にいる手塚さんに宇佐美くんが困ってることを伝えて、代わりに私が皆川部長夫妻に付くことにした
「あ、あれ相川さん?」
「うん、そうね」
「相川さんと一緒にいる人って『shindo』っていう化粧品会社の社長じゃない?」
「祥ちゃん、よく知ってるね」
「主婦は昼間のテレビ通販をよく見るの」
「なるほどね」
でも、と皆川部長が首を傾げて言った
「招待客のリストには入ってなかったんじゃないか?」
「社長夫妻と同級生らしいですよ。個人的に招待したって言ってました」
「じゃ、なんで相川が?」
私は溜め息をついた
どうせこの2人には話さないといけないことだしと思って口を開いた
「あの人、私を産んだ人なんです。だから社長が相川くんを案内役に。でも私、あの人のこと母親と思ったことはないんです。愛された覚えもない。さっきも10年ぶりくらいに会ったのに、自分の用件だけ言って、さっさと会場に戻って行きました」
部長と祥ちゃんは、私の告白に目を丸くしていた
それでも私は続けた
「ねえ、祥ちゃん。あの人何で私を産んだのかな?育てる気がないんなら、産まれてすぐに施設に預けるくらいなら、産まなきゃよかったのに。引き取っても、ほったらかしにするくらいなら、家政婦さんに任せっきりにするくらいなら、引き取らなきゃよかったのに……何でなのかな?私、あの人に、何期待してたんだろう……本当に……馬鹿みたい」
皆川部長が慌てて私を会場の外へ連れ出した
私が泣き出したからだ
祥ちゃんは私の手を握って離さなかった
控室に私を連れてきて、皆川部長は相川を呼んでくるからと、また会場に戻って行った
祥ちゃんは私と控室に残ってくれた
「ごめんね、祥ちゃん」
「何が?」
「だって」
私が言葉に詰まっていると、祥ちゃんは私をぎゅっと抱き締めた
「奈南ちゃんと私は、親友だよ?」
「祥ちゃん?」
「それだけは忘れないで」
「うん……」
そうして私達は笑い合って、祥ちゃんは私の涙を拭いてくれた
しばらくすると、相川くんが1人で控室にやって来た
「相川くん、ごめん。あの人は?」
「皆川部長が付いてくれてる」
「そう……」
相川くんがまだ残っていた私の涙を拭った
その顔は辛そうだった
すると、祥ちゃんが立ち上がった
「相川さん。奈南ちゃんよろしくお願いします。じゃ私、慎一郎さんのところに戻るね」
「祥ちゃん?」
「奈南ちゃん、今度家に遊びに来てね。絶対」
「……分かった。ちゃんと全部話すから」
祥ちゃんはにっこり笑って、会場に戻って行った
相川くんは隣に座って優しく抱き締めた
「ごめん。1人にして」
「しょうがないよ。仕事だもん。それよりいいの?こんなとこに居ても。あの人は?」
「進藤社長には皆川部長が付いてるし、吉田社長にはもう帰りますって言っておいた。もちろん奈南美さんも一緒に」
「え?」
私が驚いていると、相川くんはにっこり笑って言った
「奈南美さん、帰ろう。俺達の家に。ちゃんと全部話すから」
「うん。帰る。相川くんと一緒に。家に帰りたい」
私達は家に帰って行った
その間、相川くんは私の手を離さなかった
きついくらい握っていてくれた
だってパーティー会場に戻らなきゃいけない
仕事だと自分に言い聞かせて、化粧を直し会場へ入ると、宇佐美くんが慌てた様子で駆け寄ってきた
「どうしたの?」
「あの、この資料なんですけど、足りなくなっちゃって……」
「ああ、これなら手塚さんが知ってるわね。あ、あそこにいる。ちょっと待ってて」
皆川部長夫妻と一緒にいる手塚さんに宇佐美くんが困ってることを伝えて、代わりに私が皆川部長夫妻に付くことにした
「あ、あれ相川さん?」
「うん、そうね」
「相川さんと一緒にいる人って『shindo』っていう化粧品会社の社長じゃない?」
「祥ちゃん、よく知ってるね」
「主婦は昼間のテレビ通販をよく見るの」
「なるほどね」
でも、と皆川部長が首を傾げて言った
「招待客のリストには入ってなかったんじゃないか?」
「社長夫妻と同級生らしいですよ。個人的に招待したって言ってました」
「じゃ、なんで相川が?」
私は溜め息をついた
どうせこの2人には話さないといけないことだしと思って口を開いた
「あの人、私を産んだ人なんです。だから社長が相川くんを案内役に。でも私、あの人のこと母親と思ったことはないんです。愛された覚えもない。さっきも10年ぶりくらいに会ったのに、自分の用件だけ言って、さっさと会場に戻って行きました」
部長と祥ちゃんは、私の告白に目を丸くしていた
それでも私は続けた
「ねえ、祥ちゃん。あの人何で私を産んだのかな?育てる気がないんなら、産まれてすぐに施設に預けるくらいなら、産まなきゃよかったのに。引き取っても、ほったらかしにするくらいなら、家政婦さんに任せっきりにするくらいなら、引き取らなきゃよかったのに……何でなのかな?私、あの人に、何期待してたんだろう……本当に……馬鹿みたい」
皆川部長が慌てて私を会場の外へ連れ出した
私が泣き出したからだ
祥ちゃんは私の手を握って離さなかった
控室に私を連れてきて、皆川部長は相川を呼んでくるからと、また会場に戻って行った
祥ちゃんは私と控室に残ってくれた
「ごめんね、祥ちゃん」
「何が?」
「だって」
私が言葉に詰まっていると、祥ちゃんは私をぎゅっと抱き締めた
「奈南ちゃんと私は、親友だよ?」
「祥ちゃん?」
「それだけは忘れないで」
「うん……」
そうして私達は笑い合って、祥ちゃんは私の涙を拭いてくれた
しばらくすると、相川くんが1人で控室にやって来た
「相川くん、ごめん。あの人は?」
「皆川部長が付いてくれてる」
「そう……」
相川くんがまだ残っていた私の涙を拭った
その顔は辛そうだった
すると、祥ちゃんが立ち上がった
「相川さん。奈南ちゃんよろしくお願いします。じゃ私、慎一郎さんのところに戻るね」
「祥ちゃん?」
「奈南ちゃん、今度家に遊びに来てね。絶対」
「……分かった。ちゃんと全部話すから」
祥ちゃんはにっこり笑って、会場に戻って行った
相川くんは隣に座って優しく抱き締めた
「ごめん。1人にして」
「しょうがないよ。仕事だもん。それよりいいの?こんなとこに居ても。あの人は?」
「進藤社長には皆川部長が付いてるし、吉田社長にはもう帰りますって言っておいた。もちろん奈南美さんも一緒に」
「え?」
私が驚いていると、相川くんはにっこり笑って言った
「奈南美さん、帰ろう。俺達の家に。ちゃんと全部話すから」
「うん。帰る。相川くんと一緒に。家に帰りたい」
私達は家に帰って行った
その間、相川くんは私の手を離さなかった
きついくらい握っていてくれた