可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
それぞれの事情
目が覚めたら、朝の10時だった
ヤバイ!会社!と思って、慌てて起きたけど、今日は土曜日だったと、またベッドに突っ伏した
よく見ると、昨日のドレスを着たままで、泣きつかれて眠ったんだと思い出した
相川くんはもう起きているようで、隣には居なかった
「シャワー浴びよう。コンタクト張り付いて痛いし」
寝室を出ると、相川くんが誰かと電話で話していた
「急にそんなこと……こっちだって都合ってもんが……分かったよ。とりあえずそっち行くから……うん……じゃあな」
電話を切って、溜め息をつく相川くんに声をかけた
「おはよう。相川くん」
「あ、奈南美さん。おはよう」
「電話、どうかした?」
「ああ。ちょっと妹から」
「え?相川くん、妹がいるの!?」
「うん、そうなんだ。奈南美さん、シャワー浴びておいでよ。ご飯準備しとくから」
「う、うん」
相川くんに妹がいたなんて
そう言えば、相川くんの家族のこと全然知らないな
「私、最低な彼女だな。自分のことばかり相川くんに……」
溜め息をつきながら、シャワーを浴びた
「え?甥っ子と姪っ子の世話?」
「うん。なんか妹に急用ができたって。妹の旦那は今日仕事らしくて。うちの両親も予定入れてて今日は無理だからって、俺に連絡が」
「そうなんだ」
突然の妹さんからの電話は、自分の子供達を今日の午後だけでもいいから、面倒みてくれないかと言われたらしい
「いくつ?」
「甥は6才の小学1年生。姪は3才。とりあえず、午後から妹の所に行ってくるよ。奈南美さん、どうする?1人で家に居たくないでしょ?今日は特に」
はっきり言って、そうだった
昨日色々とあって、今日は誰かにそばにいて欲しかった
「祥ちゃんに電話してみるよ。今日、お邪魔してもいいか」
「あ、じゃ俺が皆川部長に電話するよ。頼んでみるからちょっと待ってて」
「いや、いいよ!そのくらい自分でするから」
相川くんはいいからと言って、皆川部長に電話をかけ始めた
何度か言葉を交わした後、相川くんが驚いたように、え?とか、いやそれはとか、言っている
電話を切って、小さく息を吐いた後、困ったような顔をして私を見た
「どうしたの?」
「祥子さんに『じゃ、甥っ子さん達も家に連れておいでよ』って言われて……」
「は?」
「『お菓子作って待ってるから、絶対来て下さい』って。いいのかな?本当に」
本当に困った顔をしているので、吹き出してしまった
でも、祥ちゃんらしいな
「祥ちゃんは言い出したら聞かないよ」
「だよな。そろそろ行かないと。先に奈南美さんを部長の家に送るから、一緒に出よう」
そうして私達はバタバタと支度して、部長の家に向かった
「皆川部長、突然すいませんでした。祥ちゃんもごめんね?なんか私の我が侭聞いてもらって」
「いいよ。気にするな」
「全然構わないよ。祥希ちゃん、奈南ちゃん来たよ〜」
相川くんに送ってもらって、部長の家に私だけ上がらせてもらった
2人は急な事だったのに、嫌な顔せず出迎えてくれた
「相川くんが恐縮してたよ。本当にいいのかな?って」
「いいのいいの。私も甥っ子が2人、姪っ子が1人いるから、慣れてるし。それより奈南ちゃん、目、腫れすぎだよ。冷やす?」
「いや、大丈夫。昨日はいっぱい泣いたから。2人にも迷惑をかけました。ごめんなさい」
私がそう言うと、2人は顔を見合わせて苦笑した
「奈南ちゃん、話したくなかったら話さないでいいんだけど……」
「ううん、大丈夫。聞いてもらってもいい?」
そうして私は2人に全部話した
子供の頃の事、昨日母と話した事、相川くんが母と話した事も全部
「なんか、相川くんから聞いた母の言動と、私が知ってる母とのギャップがありすぎて混乱しちゃって……って、何で祥ちゃんがそんな泣きそうな顔してるのよ」
「だって」
よく見てみると、皆川部長も目を真っ赤にさせていた
「ちょっと、皆川部長まで!やめて下さいよ!」
「いや、なんか……」
「なんか、何ですか?」
「進藤、気を悪くしないで聞いてくれるか?」
首を傾げながら、はいと言った
「僕も祥希子の親だから、最近何でも親の立場から考えてしまうんだ。だから、今回も進藤社長の立場で考えてたら……多分、相川が言ってる進藤社長が本来の君のお母さんの姿だよ」
「まさか!」
「まず、どうでもいいんなら施設から君を引き取ったりしない。それに、君を自分の会社に入れようなんてしない。家を出るのを反対したりしない。それに、君の名前だ」
「名前?」
そう、と言って皆川部長は私を真っ直ぐ見て言った
「僕も祥希子の名前を考えたから良く分かる。どうでもいいと思ってるなら、親の名前に1文字加えた名前をつけたりしない。もし君を産んだ時点で施設に預けないといけない状況だったんなら尚更だ。離れてしまう君に『あなたは私の娘です』っていう、お母さんの心の叫びなんじゃないか?」
心の叫び?
確かに私の名前は、母、南美からとったものだろう
だから、自分の名前を忌々しく感じた時もあった
本当に部長の言う通りなんだとしたら?
一瞬頭をよぎったが、首を横に振った
「それはないですよ。部長。あの人は、そんな人じゃない」
部長と祥ちゃんは、そんな私を見て溜め息をついた
ヤバイ!会社!と思って、慌てて起きたけど、今日は土曜日だったと、またベッドに突っ伏した
よく見ると、昨日のドレスを着たままで、泣きつかれて眠ったんだと思い出した
相川くんはもう起きているようで、隣には居なかった
「シャワー浴びよう。コンタクト張り付いて痛いし」
寝室を出ると、相川くんが誰かと電話で話していた
「急にそんなこと……こっちだって都合ってもんが……分かったよ。とりあえずそっち行くから……うん……じゃあな」
電話を切って、溜め息をつく相川くんに声をかけた
「おはよう。相川くん」
「あ、奈南美さん。おはよう」
「電話、どうかした?」
「ああ。ちょっと妹から」
「え?相川くん、妹がいるの!?」
「うん、そうなんだ。奈南美さん、シャワー浴びておいでよ。ご飯準備しとくから」
「う、うん」
相川くんに妹がいたなんて
そう言えば、相川くんの家族のこと全然知らないな
「私、最低な彼女だな。自分のことばかり相川くんに……」
溜め息をつきながら、シャワーを浴びた
「え?甥っ子と姪っ子の世話?」
「うん。なんか妹に急用ができたって。妹の旦那は今日仕事らしくて。うちの両親も予定入れてて今日は無理だからって、俺に連絡が」
「そうなんだ」
突然の妹さんからの電話は、自分の子供達を今日の午後だけでもいいから、面倒みてくれないかと言われたらしい
「いくつ?」
「甥は6才の小学1年生。姪は3才。とりあえず、午後から妹の所に行ってくるよ。奈南美さん、どうする?1人で家に居たくないでしょ?今日は特に」
はっきり言って、そうだった
昨日色々とあって、今日は誰かにそばにいて欲しかった
「祥ちゃんに電話してみるよ。今日、お邪魔してもいいか」
「あ、じゃ俺が皆川部長に電話するよ。頼んでみるからちょっと待ってて」
「いや、いいよ!そのくらい自分でするから」
相川くんはいいからと言って、皆川部長に電話をかけ始めた
何度か言葉を交わした後、相川くんが驚いたように、え?とか、いやそれはとか、言っている
電話を切って、小さく息を吐いた後、困ったような顔をして私を見た
「どうしたの?」
「祥子さんに『じゃ、甥っ子さん達も家に連れておいでよ』って言われて……」
「は?」
「『お菓子作って待ってるから、絶対来て下さい』って。いいのかな?本当に」
本当に困った顔をしているので、吹き出してしまった
でも、祥ちゃんらしいな
「祥ちゃんは言い出したら聞かないよ」
「だよな。そろそろ行かないと。先に奈南美さんを部長の家に送るから、一緒に出よう」
そうして私達はバタバタと支度して、部長の家に向かった
「皆川部長、突然すいませんでした。祥ちゃんもごめんね?なんか私の我が侭聞いてもらって」
「いいよ。気にするな」
「全然構わないよ。祥希ちゃん、奈南ちゃん来たよ〜」
相川くんに送ってもらって、部長の家に私だけ上がらせてもらった
2人は急な事だったのに、嫌な顔せず出迎えてくれた
「相川くんが恐縮してたよ。本当にいいのかな?って」
「いいのいいの。私も甥っ子が2人、姪っ子が1人いるから、慣れてるし。それより奈南ちゃん、目、腫れすぎだよ。冷やす?」
「いや、大丈夫。昨日はいっぱい泣いたから。2人にも迷惑をかけました。ごめんなさい」
私がそう言うと、2人は顔を見合わせて苦笑した
「奈南ちゃん、話したくなかったら話さないでいいんだけど……」
「ううん、大丈夫。聞いてもらってもいい?」
そうして私は2人に全部話した
子供の頃の事、昨日母と話した事、相川くんが母と話した事も全部
「なんか、相川くんから聞いた母の言動と、私が知ってる母とのギャップがありすぎて混乱しちゃって……って、何で祥ちゃんがそんな泣きそうな顔してるのよ」
「だって」
よく見てみると、皆川部長も目を真っ赤にさせていた
「ちょっと、皆川部長まで!やめて下さいよ!」
「いや、なんか……」
「なんか、何ですか?」
「進藤、気を悪くしないで聞いてくれるか?」
首を傾げながら、はいと言った
「僕も祥希子の親だから、最近何でも親の立場から考えてしまうんだ。だから、今回も進藤社長の立場で考えてたら……多分、相川が言ってる進藤社長が本来の君のお母さんの姿だよ」
「まさか!」
「まず、どうでもいいんなら施設から君を引き取ったりしない。それに、君を自分の会社に入れようなんてしない。家を出るのを反対したりしない。それに、君の名前だ」
「名前?」
そう、と言って皆川部長は私を真っ直ぐ見て言った
「僕も祥希子の名前を考えたから良く分かる。どうでもいいと思ってるなら、親の名前に1文字加えた名前をつけたりしない。もし君を産んだ時点で施設に預けないといけない状況だったんなら尚更だ。離れてしまう君に『あなたは私の娘です』っていう、お母さんの心の叫びなんじゃないか?」
心の叫び?
確かに私の名前は、母、南美からとったものだろう
だから、自分の名前を忌々しく感じた時もあった
本当に部長の言う通りなんだとしたら?
一瞬頭をよぎったが、首を横に振った
「それはないですよ。部長。あの人は、そんな人じゃない」
部長と祥ちゃんは、そんな私を見て溜め息をついた