可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
その時チャイムが鳴った
部長が対応して、すぐに戻ってきた


「相川が着いたみたいだ」


しばらくしてまたチャイムが鳴って、祥ちゃんが玄関に行くと、賑やかな声が聞こえてきた
大きな足音が近付いてきたと思ったら、バンっとリビングのドアが開いた
そして、飛び込んで来たのは見るからに元気な男の子
私を見つけると、目の前にやってきて、こう言った


「お前が健次の嫁さんになる人か?オレは立花隆介、6才!仲良くしてやるから、よろしくな!」

右手を私に差し出す隆介くん


これは、握手ってことだよね?


呆気にとられながらも、私が右手を出すと、隆介くんは私の手を取り、ブンブンと大きく手を振り回した


「よし!じゃオレの事は……」


ゴンッ!!


鈍い音が部屋に響いた
それはそうだろう
相川くんが隆介くんの頭に拳骨を力一杯振り落としたのだから


「痛ってーな!何すんだよ!健次!! 」
「あれだけ行儀よくしてろっつったのに、言うこと聞いてないからだろうが!このバカたれが!」
「だからって、殴ることねえじゃんか!バカ健次!それにバカって言う方がバカなんだからな!」
「ん?もう1回殴ってやろうか?」


相川くんがまた拳を振り上げると、隆介くんは慌てて私の後ろに隠れた


「あ、相川くん。もうそれくらいで……」


相川くんをなだめようと視線を移すと、相川くんのズボンにしがみついて、私を見上げている可愛い女の子がいた


「この子が姪っ子さん?」
「あ、そう。ほら鈴音。挨拶は?」
「……立花鈴音です。こんにちは」


恥ずかしそうに挨拶をすると、完全に相川くんの後ろに隠れてしまった


「ごめん。鈴音、人見知りがはげしくて……」


必死に隠れている鈴音ちゃんが可愛くて、目線を合わせる為にしゃがんだ


「進藤奈南美です。鈴音ちゃん、こんにちは」


私がそう言うと、鈴音ちゃんがちょっと笑ってくれた
相川くんも鈴音ちゃんの頭を優しく撫でる


「ほんっと、健次はすずに甘いよな。知ってるかー?そういうの、伯父バカって言うんだぞ」
「お前はいつも一言多いんだよ」


隆介くんの両方の頬っぺたを思いきり捻りあげる相川くん
痛い痛いと叫ぶ隆介くん
それを見てニコニコしている鈴音ちゃん
そして、皆川部長と祥ちゃんも堪えきれず声を上げて笑っている
私も、いつの間にか笑っていた
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