可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
私達が飾り付けたプリンを皆で食べていると、それまで美味しい美味しいと元気に食べていた隆介くんが、急に大人しくなった
部長がどうした?と聞くと、隆介くんは小さな声でボソボソと話し出した
「ぶちょーも健次と一緒で、スーツとか着て『ちゃんとした格好』で仕事してんのか?」
いきなりの隆介くんの質問に、部長は不思議な顔をしながらも答えた
「スーツ着てるのが『ちゃんとした格好』かどうかは知らないけど……一応、仕事してる時はスーツ着てるぞ」
「じゃ、健次もぶちょーも、偉いのか?オレの父ちゃんはスーツなんか着て仕事してないから、『ちゃんとした格好』してないから、偉くないんだって、言われたっ……」
ついには涙をポロポロと流してしまった隆介くん
私の膝の上にいる鈴音ちゃんも、お兄ちゃんがいきなり泣いてしまったからか、泣き出してしまった
私達はいきなりの事にどうしようかと困っていたら、相川くんが隆介くんを抱き上げて、自分の膝の上に座らせ、背中を優しくポンポンと叩いた
隆介くんは、相川くんにしがみついて声を堪えながらも泣いている
「隆、俺も子供の頃お前と同じ事思ってたよ」
「……健次も?」
「そう」
相川くんの言葉に、私達は3人、顔を見合わせた
自分も同じ事思ってたって、どういうこと?
「俺の父ちゃん、お前のじいちゃんさ『ちゃんとした格好』で仕事してるか?」
「してない。だって、居酒屋の大将だもん、じいちゃん」
「そう。だからいつも不思議だったよ。『うちの父ちゃんは、何で他の父ちゃん達と違って、朝早く起きてスーツ着て会社に行かないんだろう?』ってな」
それは初めて聞く相川くんの父親のことだった
「クラスの奴になんか言われたのか?」
相川くんが聞くけど、隆介くんは答えない
「隆、大丈夫だよ。お前の父ちゃんと母ちゃんには言わないから」
相川くんにそう言われて、隆介くんはやっと口を開いた
「……同じクラスの岡田って言う奴が、父ちゃんが家に帰って来た時に見たって。あいつ家近いから。それで、『お前のパパは何であんな汚い格好して帰って来たんだ?僕のパパはスーツ着て仕事してるんだ。だから、僕のパパはお前のパパより偉いんだからな』って。でも、俺の父ちゃんは自分が作った道路を見せてくれたし、今は橋を作ってるんだ。凄く格好いいんだ……なのに……」
よっぽど悔しかったのだろう
自分が格好いいと思っていた父親の事を馬鹿にされて
ただスーツを着て仕事をしてないというだけで
「じゃ、今度岡田って言う奴が同じ事言ってきたらこう言ってやれ。『オレの父ちゃんは、道路や橋を作ってるんだ。お前の父ちゃんにそれが作れるのか?作れないなら、ガタガタ言ってんじゃねえよ』ってな」
「え?」
「まさか言えないのか?」
相川くんが、ん?と聞くと、隆介くんは首を横に振った
それを見て相川くんはにっこり笑った
「いいか?隆介。大事なのはどんな格好して仕事してるかじゃなくて、どんな仕事してるのかっていうことなんだ。それに、何の仕事が偉いとか偉くないとかは無いんだ。みんな一生懸命働いてるんだからな」
「うん」
「お前は自分の父ちゃんの事、格好いいと思ってんだろ?」
「オレの父ちゃんは、自分の作った道路を見せてくれた。すっごく格好よかった。今、作ってる橋も、出来たら連れてってくれるって言った」
「それでいいんだよ。『オレの父ちゃんはスーツなんか着なくても、格好いいんだ』って思ってればいい。分かったか?」
「うん!」
「よし、じゃプリン食べろ。残すんじゃねえぞ」
そうして相川くんは隆介くんを椅子に戻して、隆介くんの頭を手荒く撫でた
隆介くんは満面の笑顔で残りのプリンを食べた
私は何て言っていいのか分からずに、呆然としていると、部長が口を開いた
「相川お前、お父さんのこと、『父ちゃん』って呼ぶのか?」
「そうですよ。悪いですか?って言うか、部長が1番突っ込みたいとこって、そこですか?」
「いや、意外だなと思って。ねえ?祥子」
「やだ、慎一郎さん。私に振らないでよ!」
私は思わず吹き出して、声を上げて笑ってしまった
それにつられて、皆も笑いだした
そんな大人達を、子供達は不思議そうに見ていた
部長がどうした?と聞くと、隆介くんは小さな声でボソボソと話し出した
「ぶちょーも健次と一緒で、スーツとか着て『ちゃんとした格好』で仕事してんのか?」
いきなりの隆介くんの質問に、部長は不思議な顔をしながらも答えた
「スーツ着てるのが『ちゃんとした格好』かどうかは知らないけど……一応、仕事してる時はスーツ着てるぞ」
「じゃ、健次もぶちょーも、偉いのか?オレの父ちゃんはスーツなんか着て仕事してないから、『ちゃんとした格好』してないから、偉くないんだって、言われたっ……」
ついには涙をポロポロと流してしまった隆介くん
私の膝の上にいる鈴音ちゃんも、お兄ちゃんがいきなり泣いてしまったからか、泣き出してしまった
私達はいきなりの事にどうしようかと困っていたら、相川くんが隆介くんを抱き上げて、自分の膝の上に座らせ、背中を優しくポンポンと叩いた
隆介くんは、相川くんにしがみついて声を堪えながらも泣いている
「隆、俺も子供の頃お前と同じ事思ってたよ」
「……健次も?」
「そう」
相川くんの言葉に、私達は3人、顔を見合わせた
自分も同じ事思ってたって、どういうこと?
「俺の父ちゃん、お前のじいちゃんさ『ちゃんとした格好』で仕事してるか?」
「してない。だって、居酒屋の大将だもん、じいちゃん」
「そう。だからいつも不思議だったよ。『うちの父ちゃんは、何で他の父ちゃん達と違って、朝早く起きてスーツ着て会社に行かないんだろう?』ってな」
それは初めて聞く相川くんの父親のことだった
「クラスの奴になんか言われたのか?」
相川くんが聞くけど、隆介くんは答えない
「隆、大丈夫だよ。お前の父ちゃんと母ちゃんには言わないから」
相川くんにそう言われて、隆介くんはやっと口を開いた
「……同じクラスの岡田って言う奴が、父ちゃんが家に帰って来た時に見たって。あいつ家近いから。それで、『お前のパパは何であんな汚い格好して帰って来たんだ?僕のパパはスーツ着て仕事してるんだ。だから、僕のパパはお前のパパより偉いんだからな』って。でも、俺の父ちゃんは自分が作った道路を見せてくれたし、今は橋を作ってるんだ。凄く格好いいんだ……なのに……」
よっぽど悔しかったのだろう
自分が格好いいと思っていた父親の事を馬鹿にされて
ただスーツを着て仕事をしてないというだけで
「じゃ、今度岡田って言う奴が同じ事言ってきたらこう言ってやれ。『オレの父ちゃんは、道路や橋を作ってるんだ。お前の父ちゃんにそれが作れるのか?作れないなら、ガタガタ言ってんじゃねえよ』ってな」
「え?」
「まさか言えないのか?」
相川くんが、ん?と聞くと、隆介くんは首を横に振った
それを見て相川くんはにっこり笑った
「いいか?隆介。大事なのはどんな格好して仕事してるかじゃなくて、どんな仕事してるのかっていうことなんだ。それに、何の仕事が偉いとか偉くないとかは無いんだ。みんな一生懸命働いてるんだからな」
「うん」
「お前は自分の父ちゃんの事、格好いいと思ってんだろ?」
「オレの父ちゃんは、自分の作った道路を見せてくれた。すっごく格好よかった。今、作ってる橋も、出来たら連れてってくれるって言った」
「それでいいんだよ。『オレの父ちゃんはスーツなんか着なくても、格好いいんだ』って思ってればいい。分かったか?」
「うん!」
「よし、じゃプリン食べろ。残すんじゃねえぞ」
そうして相川くんは隆介くんを椅子に戻して、隆介くんの頭を手荒く撫でた
隆介くんは満面の笑顔で残りのプリンを食べた
私は何て言っていいのか分からずに、呆然としていると、部長が口を開いた
「相川お前、お父さんのこと、『父ちゃん』って呼ぶのか?」
「そうですよ。悪いですか?って言うか、部長が1番突っ込みたいとこって、そこですか?」
「いや、意外だなと思って。ねえ?祥子」
「やだ、慎一郎さん。私に振らないでよ!」
私は思わず吹き出して、声を上げて笑ってしまった
それにつられて、皆も笑いだした
そんな大人達を、子供達は不思議そうに見ていた