可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
裏返し
家に帰るなりベッドに連れて行かれて激しく抱かれた
お互いに何度も求め合って、最後に達した時には身体に力が入らないぐらいだ
そんな時、相川くんが私を見下ろしながらいった


「奈南美、愛してる」
「……え?」
「愛してるよ。奈南美」


私の顔を両手で包み、笑顔で見つめられて言われた


愛してる


「あいしてる?」
「うん。何で泣くの?奈南美」


私の涙を優しく拭う
だって


「初めて言われた」
「え?」
「『愛してる』って、産まれて初めて言われた」


今まで付き合った人達にも、親からも言われたことがなかったその言葉
それを相川くんが言ってくれた


相川くんはふっと笑って、瞼にキスをした


「これからは何度でも言ってあげる。愛してるよ。奈南美」


涙が止まらなかった
嗚咽を上げて泣いた


「奈南美、愛してる。愛してるよ……」


結局私が眠りにつくまで、相川くんは私に、愛してると言い続けた



心地よい温もりを感じて目が覚めた
目を開けると、相川くんが優しい笑顔で私の顔をタオルで拭っていた
そして、水の音が聞こえる
え?と思ってよく見てみると、そこはお風呂場で、私は相川くんに抱かれて湯船に浸かっていた


「おはよう、奈南美さん。よく寝てたね」
「何で……お風呂?」
「昨日はお互いドロドロなのにそのまま寝ちゃったからね」
「私?」
「途中で起きるかと思ったけど、よっぽど疲れてたんだね」


それを聞いてカァっと顔が熱くなった


「だって、それは」
「はいはい。俺のせいだね。悪かったよ。俺、先に上がるから奈南美さんはゆっくり上がっておいで」


相川くんは私の唇に軽くキスをして、湯船から出て素早く身体を洗い、脱衣場へと行ってしまった


「私、どれだけこうしてたんだろう。相川くん、呆れたかな?」


溜め息をつくと、私も身体を洗い、脱衣場へと向かった


リビングへと向かい、時計を見るともう、お昼の12時を過ぎていた
私がびっくりしていると、相川くんは苦笑しながら、食事の用意をしながら聞いてきた


「今日はゆっくりしてるでしょ?はい出来た。食べよう」
「あ、ありがとう。いや、ちょっと行きたい所があるの……いただきます」
「どこ?」
「佳苗さんのお見舞い」


それは先日、母が言っていた家政婦の佳苗さんのこと
母よりなついていた佳苗さんのお見舞いには、早く行きたいと思っていた


「そっか。じゃ16時頃家を出て、帰りはどこかでご飯食べて帰ろうか。奈南美さん、まだ疲れてるみたいだし、ちょっと休んで出掛けよう」
「え?」
「何そんなに驚いてるの?」
「一緒に、行ってくれるの?」
「え?」


私の言葉に相川くんは目を丸くしていたけど、すぐに笑顔になった


「当たり前だろ?それとも、佳苗さんに俺の事、紹介してくれないわけ?」


ん?と首を傾げる相川くんに、ぷっと吹き出して、首を横に振った


「ありがとう、相川くん。きっと佳苗さんも喜んでくれる」
「本当?なんか緊張するなぁ」


そんな相川くんを見て、私はまた吹き出した
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