可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
夕方になり、佳苗さんが入院しているという病院に相川くんと一緒に向かった
母の配慮か、佳苗さんは個室に入院していた
声を掛けて部屋に入ると、ベッドを起こして座っている佳苗さんがいた
「佳苗さん、お久しぶりです」
「お嬢様……」
私を見るなり口を手で押さえて、涙を流す佳苗さん
私は持って来た花束を相川くんに預けて、佳苗さんに駆け寄り背中を擦った
「佳苗さん、泣かないでよ。私まで泣いちゃうじゃない」
「顔を、顔をよく見せて下さい」
佳苗さんは私の顔を両手で包み、私の顔を優しく見つめる
「お元気そうで、良かった。10年前と変わらずお綺麗ですよ。お嬢様」
「止めてよ。相変わらず誉め上手なんだから。それにもう、お嬢様なんて呼ばれる年じゃないわよ?」
「いいえ。私にとっては、お嬢様です。可愛い可愛いお嬢様です」
そう言って佳苗さんは、私を優しく撫でる
いつもそうだった
佳苗さんは、私をこうやって母親のように優しく包んでくれていた
「佳苗さん、入院なんてどうしたの?びっくりしたんだから」
「申し訳ありません。昔から貧血気味だったのですが、最近酷くなりまして。南美さんに『この際しっかり治してきてください』って言われて入院を。こんないい部屋に入院させてもらって、申し訳ないくらいです。あの、お嬢様。そちらの素敵な方は?もしかして……」
佳苗さんが私の後ろにいる相川くんに目を向ける
相川くんは、にっこり笑って佳苗さんにお辞儀をした
「初めまして。奈南美さんと同じ会社で働いている相川健次です」
「佳苗さん、あのね?」
私が言葉を続けようとすると、佳苗さんは笑いながら何度も頷いた
「そうですか。お嬢様の、良かった。本当に良かった……」
「佳苗さん」
佳苗さんは相川くんに頭を下げてこう言った
「お嬢様のこと、よろしくお願いします」
それを見て私は涙を流した
はっきり言って、佳苗さんは赤の他人だ
そんな人が私の為に頭を下げている
私の事を思って
そうして相川くんはっきり言った
「はい。大切にします」
佳苗さんは満足そうに笑っていた
それからしばらく佳苗さんと話していた
相川くんが花瓶に花を生けてくると席を外した時なんて、佳苗さんはハンサムな方ですねぇと関心していた
そして3人で話していると、佳苗さんは昔の事を話し始めた
佳苗さんは昔、乳児院で働いていたそうだ
私はその乳児院に預けられていた
「佳苗さん、私の事知ってたの?」
「はい。本当に可愛い赤ちゃんでした」
私が児童福祉施設に預けられても、私の事を気に掛けてくれて何度も来てくれていたらしい
私に分からないように
「何でそこまで私の事を?」
「私は子供が産めない体で、それが原因で離婚して乳児院で働いていたんです。保育士の資格を持っていましたから」
そんな時、母が私を乳児院に連れてきた
私が産まれて半年ぐらいの時だったらしい
「私より10才年下の南美さん。そんな人が子供を産んで、施設に預けに来た。しかも、産む前から預けようと思っていたと言ったんです。私には望んでも子供は産めないと言うのに」
佳苗さんはそんな母に憤り、思わず聞いたそうだ
「じゃ、なぜ産んだの?」
母は、佳苗さんを真っ直ぐ見て言った
「産みたかったからです。私の子を。今は1人じゃ育てられない。だから預けに来ました。でも、必ず迎えに来ます。この子を守られる力を手に入れたら、絶対に迎えに来ますから。だからそれまで代わりにこの子を守って下さい。お願いします」
そうして土下座までしたと言うのだ
「何か、余程の事情があったんだと思います。そんな南美さんを見て、私はこの親子の力になろうと心に決めたんです」
そして母は私を預けて去って行った
母の配慮か、佳苗さんは個室に入院していた
声を掛けて部屋に入ると、ベッドを起こして座っている佳苗さんがいた
「佳苗さん、お久しぶりです」
「お嬢様……」
私を見るなり口を手で押さえて、涙を流す佳苗さん
私は持って来た花束を相川くんに預けて、佳苗さんに駆け寄り背中を擦った
「佳苗さん、泣かないでよ。私まで泣いちゃうじゃない」
「顔を、顔をよく見せて下さい」
佳苗さんは私の顔を両手で包み、私の顔を優しく見つめる
「お元気そうで、良かった。10年前と変わらずお綺麗ですよ。お嬢様」
「止めてよ。相変わらず誉め上手なんだから。それにもう、お嬢様なんて呼ばれる年じゃないわよ?」
「いいえ。私にとっては、お嬢様です。可愛い可愛いお嬢様です」
そう言って佳苗さんは、私を優しく撫でる
いつもそうだった
佳苗さんは、私をこうやって母親のように優しく包んでくれていた
「佳苗さん、入院なんてどうしたの?びっくりしたんだから」
「申し訳ありません。昔から貧血気味だったのですが、最近酷くなりまして。南美さんに『この際しっかり治してきてください』って言われて入院を。こんないい部屋に入院させてもらって、申し訳ないくらいです。あの、お嬢様。そちらの素敵な方は?もしかして……」
佳苗さんが私の後ろにいる相川くんに目を向ける
相川くんは、にっこり笑って佳苗さんにお辞儀をした
「初めまして。奈南美さんと同じ会社で働いている相川健次です」
「佳苗さん、あのね?」
私が言葉を続けようとすると、佳苗さんは笑いながら何度も頷いた
「そうですか。お嬢様の、良かった。本当に良かった……」
「佳苗さん」
佳苗さんは相川くんに頭を下げてこう言った
「お嬢様のこと、よろしくお願いします」
それを見て私は涙を流した
はっきり言って、佳苗さんは赤の他人だ
そんな人が私の為に頭を下げている
私の事を思って
そうして相川くんはっきり言った
「はい。大切にします」
佳苗さんは満足そうに笑っていた
それからしばらく佳苗さんと話していた
相川くんが花瓶に花を生けてくると席を外した時なんて、佳苗さんはハンサムな方ですねぇと関心していた
そして3人で話していると、佳苗さんは昔の事を話し始めた
佳苗さんは昔、乳児院で働いていたそうだ
私はその乳児院に預けられていた
「佳苗さん、私の事知ってたの?」
「はい。本当に可愛い赤ちゃんでした」
私が児童福祉施設に預けられても、私の事を気に掛けてくれて何度も来てくれていたらしい
私に分からないように
「何でそこまで私の事を?」
「私は子供が産めない体で、それが原因で離婚して乳児院で働いていたんです。保育士の資格を持っていましたから」
そんな時、母が私を乳児院に連れてきた
私が産まれて半年ぐらいの時だったらしい
「私より10才年下の南美さん。そんな人が子供を産んで、施設に預けに来た。しかも、産む前から預けようと思っていたと言ったんです。私には望んでも子供は産めないと言うのに」
佳苗さんはそんな母に憤り、思わず聞いたそうだ
「じゃ、なぜ産んだの?」
母は、佳苗さんを真っ直ぐ見て言った
「産みたかったからです。私の子を。今は1人じゃ育てられない。だから預けに来ました。でも、必ず迎えに来ます。この子を守られる力を手に入れたら、絶対に迎えに来ますから。だからそれまで代わりにこの子を守って下さい。お願いします」
そうして土下座までしたと言うのだ
「何か、余程の事情があったんだと思います。そんな南美さんを見て、私はこの親子の力になろうと心に決めたんです」
そして母は私を預けて去って行った