可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
手紙
パーティーがあった週明け、私は出社早々、社長に謝られた
あれから奥さんにも、こっぴどく怒られたそうだ
パーティーが終わった後、母と社長夫妻でちょっと飲んだらしい
「久しぶりに南美と話せてよかったよ。妻も喜んでた。南美も……ま、いつか君達親子が笑って話せるようなるのを願っているよ」
社長にそう言われて、私はただ苦笑するしかなかった
相川くんはと言うと、最近社長室に来ることが多くなった
何を企んでるの?と聞いても笑って誤魔化すだけで教えてくれず、社長や皆川部長に聞いても、はぐらかされて教えてはくれなかった
それから私達は、結婚式の準備を少しずつ始めた
色んな式場を見に行ったり、マリッジリングを選んだりと、本当にこの人と結婚するんだと、段々実感が沸いてきた
佳苗さんはお見舞いに行ってから程なく退院した
あれから連絡を取り合うようになり、私達の家に招待してご飯も一緒に食べたりした
結婚式にも来てねと言ったら、泣いて喜んでくれたが、やはり母の事を気にしているようだった
「心配しないで下さい。悪いようにはしませんから」
相川くんの言葉に安心したのか、楽しみにしていますと言ってくれた
「ねえ、一体何考えてるの?」
「まだ内緒」
どれだけ食い下がってもまだ教えてはくれない
私は段々諦めていった
いつか教えてくれるだろうと思って
そんな日々を過ごしていたある日、社長に呼ばれた
「皆川の義理のお袋さんが倒れたらしい。かなり危険な状態だそうだ」
部長の義理のお母さんって
祥ちゃんのお母さん?
そして、祥ちゃんのお母さんが息を引き取ったのは、倒れてから3日後のことだった
通夜と葬儀での祥ちゃんは気丈にふるまっていた
私と相川くんはお焼香を済ませ、親族の方々に挨拶をするとき、私は祥ちゃんの手を握った
祥ちゃんは一瞬泣きそうな顔をしたが、来てくれてありがとうと、小さく言った
帰りの車の中で相川くんがポツリと呟く
「人って、あっけなく逝っちゃうもんなんだな」
祥ちゃんのお母さんは、若い頃に旦那さんを亡くし、苦労しながら3人の子供を1人で育て上げた
いつも元気な人だったと聞いていたのに
「そうだね」
ふと、自分の母を思い浮かべた
母が突然逝ってしまったら、私はどうするんだろう?
やっぱり悲しいのだろうか?
涙を流すのだろうか?
寂しいと思うのだろうか?
それとも、何とも思わないのだろうか?
そんなことを思いながら車に揺られて帰った
葬儀から1週間が経ち、皆川部長が出社してきて、秘書室にやってきた
「進藤課長。通夜と葬儀の時はありがとう」
「いえ。お悔やみを申し上げます。あの、奥様は?」
「ああ、今は僕の実家にいるよ。しばらくは僕も実家から出勤することにした」
「そうですか」
「役員室で仕事片付けて来る。悪いけど、今日は進藤課長が手伝ってくれないか?」
部長はそう言うと、さっさと役員室へと消えて行った
何で私なんだろう?
いつもは秘書室のメンバーに手伝わせるのに
私は首を傾げながら、部長の部屋へと向かった
部屋へと入ると、部長は既に机に向かって書類を片付けていた
「あの、部長?」
「悪いな、わざわざ。これを渡したくてね……」
部長がスーツの内ポケットから取り出したのは、1通の手紙
「祥子から、奈南ちゃんにって」
「え?」
「面と向かっては話せそうにないから手紙にしたって言ってたよ。帰ってから読むといい」
私が手紙を受け取ると、部長はにっこり笑って、仕事を始めた
私はしばらく手紙を見て呆然としていたが、部長の仕事を手伝うことにした
家に帰って、夕飯を食べているときに、祥ちゃんから手紙を貰ったと相川くんに告げると
「後片付けはしとくから、早く読みなよ」
と言ってくれたので、言葉に甘えることにした
そして私は、リビングのソファーに座り、祥ちゃんからの手紙を開いた
あれから奥さんにも、こっぴどく怒られたそうだ
パーティーが終わった後、母と社長夫妻でちょっと飲んだらしい
「久しぶりに南美と話せてよかったよ。妻も喜んでた。南美も……ま、いつか君達親子が笑って話せるようなるのを願っているよ」
社長にそう言われて、私はただ苦笑するしかなかった
相川くんはと言うと、最近社長室に来ることが多くなった
何を企んでるの?と聞いても笑って誤魔化すだけで教えてくれず、社長や皆川部長に聞いても、はぐらかされて教えてはくれなかった
それから私達は、結婚式の準備を少しずつ始めた
色んな式場を見に行ったり、マリッジリングを選んだりと、本当にこの人と結婚するんだと、段々実感が沸いてきた
佳苗さんはお見舞いに行ってから程なく退院した
あれから連絡を取り合うようになり、私達の家に招待してご飯も一緒に食べたりした
結婚式にも来てねと言ったら、泣いて喜んでくれたが、やはり母の事を気にしているようだった
「心配しないで下さい。悪いようにはしませんから」
相川くんの言葉に安心したのか、楽しみにしていますと言ってくれた
「ねえ、一体何考えてるの?」
「まだ内緒」
どれだけ食い下がってもまだ教えてはくれない
私は段々諦めていった
いつか教えてくれるだろうと思って
そんな日々を過ごしていたある日、社長に呼ばれた
「皆川の義理のお袋さんが倒れたらしい。かなり危険な状態だそうだ」
部長の義理のお母さんって
祥ちゃんのお母さん?
そして、祥ちゃんのお母さんが息を引き取ったのは、倒れてから3日後のことだった
通夜と葬儀での祥ちゃんは気丈にふるまっていた
私と相川くんはお焼香を済ませ、親族の方々に挨拶をするとき、私は祥ちゃんの手を握った
祥ちゃんは一瞬泣きそうな顔をしたが、来てくれてありがとうと、小さく言った
帰りの車の中で相川くんがポツリと呟く
「人って、あっけなく逝っちゃうもんなんだな」
祥ちゃんのお母さんは、若い頃に旦那さんを亡くし、苦労しながら3人の子供を1人で育て上げた
いつも元気な人だったと聞いていたのに
「そうだね」
ふと、自分の母を思い浮かべた
母が突然逝ってしまったら、私はどうするんだろう?
やっぱり悲しいのだろうか?
涙を流すのだろうか?
寂しいと思うのだろうか?
それとも、何とも思わないのだろうか?
そんなことを思いながら車に揺られて帰った
葬儀から1週間が経ち、皆川部長が出社してきて、秘書室にやってきた
「進藤課長。通夜と葬儀の時はありがとう」
「いえ。お悔やみを申し上げます。あの、奥様は?」
「ああ、今は僕の実家にいるよ。しばらくは僕も実家から出勤することにした」
「そうですか」
「役員室で仕事片付けて来る。悪いけど、今日は進藤課長が手伝ってくれないか?」
部長はそう言うと、さっさと役員室へと消えて行った
何で私なんだろう?
いつもは秘書室のメンバーに手伝わせるのに
私は首を傾げながら、部長の部屋へと向かった
部屋へと入ると、部長は既に机に向かって書類を片付けていた
「あの、部長?」
「悪いな、わざわざ。これを渡したくてね……」
部長がスーツの内ポケットから取り出したのは、1通の手紙
「祥子から、奈南ちゃんにって」
「え?」
「面と向かっては話せそうにないから手紙にしたって言ってたよ。帰ってから読むといい」
私が手紙を受け取ると、部長はにっこり笑って、仕事を始めた
私はしばらく手紙を見て呆然としていたが、部長の仕事を手伝うことにした
家に帰って、夕飯を食べているときに、祥ちゃんから手紙を貰ったと相川くんに告げると
「後片付けはしとくから、早く読みなよ」
と言ってくれたので、言葉に甘えることにした
そして私は、リビングのソファーに座り、祥ちゃんからの手紙を開いた