可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
ご婦人はしばらく泣いていたが、落ち着いたのかごめんなさいねと言って涙を拭いた
「まずは自己紹介しなくちゃね」
「あの……」
「初めまして、奈南美さん。私は志賀崎静香。この人はずっと私を世話してくれている、杉山保志。杉山、あれを」
「はい奥様」
杉山さんはテーブルの上にアルバムを拡げた
そこには、一組の幸せそうなカップルの写真
「これ……」
「気が付いた?」
志賀崎さんは懐かしそうにその写真を撫でながら言った
「若い頃のあなたのお母さん南美さんと、私の息子。志賀崎 尊(たける)。あなたの父親ですよ。奈南美さん」
私の両親だと言われた写真を、私はじっと見た
無意識に相川くんに手を伸ばすと、ぎゅっと手を握ってくれた
「あなたは尊にそっくりね。尊は私に似ているから、だから、ほら見て?あなたは私の若いころにそっくりだわ」
そう言って指さした写真には、小さな男の子を抱いている志賀崎さん
本当に私と瓜二つだった
志賀崎さんはそう言うとため息をついて、こう言った
「ごめんなさいね、奈南美さん。あなたを、あなた達親子を苦しめたのは、この私」
「えっ?」
「私があなたの両親を追い詰めたばっかりに尊を死なせてしまった。あの頃の私は南美さんを苦しめることでしか生きてはいけなかったの」
「あの、私の父を、ですか?」
「そう。あなたの父親、私の息子、尊はわたしが死なせたのも同然。長くなるけど。聞いてちょうだい」
そう言うと志賀崎さんはゆっくりと話し始めた
志賀崎さんのお父さんは、F社と肩を並べるS商事を含む志賀崎グループの創業者、志賀崎淳之介
はっきり言って経済学の教科書にも載るような人だ
一代で財を築き、志賀崎グループを日本を代表する企業グループの一つに押し上げた人
志賀崎さんは、そんな志賀崎淳之介の一人娘なんだそうだ
「だから、ずっと父には言われていたわ『お前は私が探した男と結婚して婿養子を迎えるんだ』と」
そうして父親の言う通り、父親が探してきた人と結婚した
「あの頃はそれが当たり前だと思っていたの。父の言うとおりに結婚して、父が築いたグループに役立つことが私の役目だと思っていたわ」
それはしょうがないことだと思う
時代が時代だし、志賀崎さんが意見を言うことなど考えられないことだったんだろう
「でもそんな結婚生活がうまくいくはずがなくてね」
夫婦の生活はすれ違い、結婚して何年たっても子供ができることはなかった
「父からはいつも言われてた『いい加減跡継ぎを産まんか』って。主人もこのままじゃ自分の立場が危ういと思ったのね。どうにか子供をと思っても、そんな2人に都合のいいことは起きなかった」
そんな諦めかけた時に妊娠したのだそうだ
志賀崎さんは40歳になっていた
「そうして尊が産まれたの。今思えばあの時が一番幸せな時だったわ」
志賀崎さんは悲しそうに笑って続けた
「尊が産まれて父は安心したかのように死んでしまった。そして主人は『離婚して下さい』と言ってきたわ」
「そんな……」
志賀崎さんのご主人には結婚する前から大切な人がいたらしい
しかし、淳之介氏の一声で志賀崎さんとの結婚が決まってしまった
結婚してからもその女性との関係は続いているという
しかも淳之介氏の公認で
「まずは自己紹介しなくちゃね」
「あの……」
「初めまして、奈南美さん。私は志賀崎静香。この人はずっと私を世話してくれている、杉山保志。杉山、あれを」
「はい奥様」
杉山さんはテーブルの上にアルバムを拡げた
そこには、一組の幸せそうなカップルの写真
「これ……」
「気が付いた?」
志賀崎さんは懐かしそうにその写真を撫でながら言った
「若い頃のあなたのお母さん南美さんと、私の息子。志賀崎 尊(たける)。あなたの父親ですよ。奈南美さん」
私の両親だと言われた写真を、私はじっと見た
無意識に相川くんに手を伸ばすと、ぎゅっと手を握ってくれた
「あなたは尊にそっくりね。尊は私に似ているから、だから、ほら見て?あなたは私の若いころにそっくりだわ」
そう言って指さした写真には、小さな男の子を抱いている志賀崎さん
本当に私と瓜二つだった
志賀崎さんはそう言うとため息をついて、こう言った
「ごめんなさいね、奈南美さん。あなたを、あなた達親子を苦しめたのは、この私」
「えっ?」
「私があなたの両親を追い詰めたばっかりに尊を死なせてしまった。あの頃の私は南美さんを苦しめることでしか生きてはいけなかったの」
「あの、私の父を、ですか?」
「そう。あなたの父親、私の息子、尊はわたしが死なせたのも同然。長くなるけど。聞いてちょうだい」
そう言うと志賀崎さんはゆっくりと話し始めた
志賀崎さんのお父さんは、F社と肩を並べるS商事を含む志賀崎グループの創業者、志賀崎淳之介
はっきり言って経済学の教科書にも載るような人だ
一代で財を築き、志賀崎グループを日本を代表する企業グループの一つに押し上げた人
志賀崎さんは、そんな志賀崎淳之介の一人娘なんだそうだ
「だから、ずっと父には言われていたわ『お前は私が探した男と結婚して婿養子を迎えるんだ』と」
そうして父親の言う通り、父親が探してきた人と結婚した
「あの頃はそれが当たり前だと思っていたの。父の言うとおりに結婚して、父が築いたグループに役立つことが私の役目だと思っていたわ」
それはしょうがないことだと思う
時代が時代だし、志賀崎さんが意見を言うことなど考えられないことだったんだろう
「でもそんな結婚生活がうまくいくはずがなくてね」
夫婦の生活はすれ違い、結婚して何年たっても子供ができることはなかった
「父からはいつも言われてた『いい加減跡継ぎを産まんか』って。主人もこのままじゃ自分の立場が危ういと思ったのね。どうにか子供をと思っても、そんな2人に都合のいいことは起きなかった」
そんな諦めかけた時に妊娠したのだそうだ
志賀崎さんは40歳になっていた
「そうして尊が産まれたの。今思えばあの時が一番幸せな時だったわ」
志賀崎さんは悲しそうに笑って続けた
「尊が産まれて父は安心したかのように死んでしまった。そして主人は『離婚して下さい』と言ってきたわ」
「そんな……」
志賀崎さんのご主人には結婚する前から大切な人がいたらしい
しかし、淳之介氏の一声で志賀崎さんとの結婚が決まってしまった
結婚してからもその女性との関係は続いているという
しかも淳之介氏の公認で