可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
目が覚めると朝だった
て言うか、寝たのはほんの何時間か前だけど

そうさせた張本人は、私を抱き締めたまま、まだ寝ている
私の頭に自分の顎を乗せているので、私は目が覚めたというのに全く動けない
ふと寝てしまう前の事を思い出す
相川くんはそれはそれは大事に私の事を扱ってくれた


「奈南美」
「可愛い」
「好きだ」

と何度も何度も言われた
呼び捨てで呼ばれるのも、敬語を使わないのも、心地が良かった
そんな事を思い出して、1人で赤面していると、相川くんがぴくっと動いた


「う……ん」
「……おはよう」


私が相川くんを見上げてそう言うと、相川くんは私を見て、にっこり笑った


「おはようございます。奈南美さん。今日も朝から可愛いですね」
「なっ……何っ言って……」
「可愛い」


朝っぱらから爽やかな笑顔でそんなこと言われても困ります!
赤面している私にチュッとキスをした相川くんは、私を軽々と抱き上げて、バスルームへ向かって行く

当たり前だが2人とも素っ裸だし、お姫様抱っこなんてされたことないし、恥ずかしくて両手で顔を覆ってしまった


「何で顔隠すんですか?」


そう言って余裕な顔をしている彼氏に体を洗われて、その彼が自分の体を洗っている隙に私はバスルームから逃げ出した
そして相川くんがシャワーを終えた時には、私はもう着替え終えていた


「もう服来たんですね。残念」
「いつまでも素っ裸な訳ないじゃない」


相川くんは、ははっと笑って、私の額にキスをした


「朝ごはん食べたら、買い物行きましょうか」
「うん、その前にちょっと家に帰っていい?」
「え?」
「だって、着替えて買い物行きたいし……」


昨日は会社帰りにそのまま相川くんの家に来たので、パンツスーツのまんまだ
だから買い物するなら、楽な格好をして行きたかった


「それもそうですね。じゃ俺、車出しますんで、ドライブがてら買い物しましょうか」
「車持ってたの!?」
「はい。通勤には使ってないですけどね」
「へえ……」


一体何人の彼女を助手席に乗せたんでしょうねえ?


「何考えてるんですか?」
「別に、何も?」
「本当に?」
「しつこいわよ」


軽く睨むと、相川くんは肩を竦めて「恐いですよ、奈南美さん」と言ってキッチンに消えて行った


こんな女のどこが可愛いんだか……

と思って溜め息をついた

そんな私をキッチンから、微笑みながら見てる人がいるなんて気付きもしなかった
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