可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
社長室に入ると社長にソファに座るように促された
私がソファに座ると、社長も私の前のソファに座った
「南美とはちゃんと話せたみたいだな。南美から電話があったよ。お礼を言われた」
「いえ。こちらこそ色々お気遣いをしていただいて。志賀崎さんへの橋渡しも社長がしてくれたと相川課長から聞きました。ありがとうございました」
「いや。学生の頃の南美を知ってるからか、なんとかしてあげたくてね。本当にがむしゃらに勉強してたよ、復学したあとの南美は。今思えば、1日でも早く君を迎えに行きたかったんだろうな」
「そう、ですか」
私が頭を下げると社長がフッと笑った
「社長?」
「まさか君が、あの志賀崎先輩の娘だとは思ってもみなかったよ」
ああと思って、私も笑った
「そうですね。私もまだ実感がありません」
「そうだろうな……君は志賀崎グループへは行かないのか?」
私はびっくりして社長を見ると、こちらを伺うように私を見ている
私は、いいえと言って首を横に振った
「行きませんよ」
「なぜ?」
「……志賀崎さんもそんな事を望んではいなかったんでしょう。一言もそんなことは言いませんでした」
「そうか」
そう、志賀崎さんは私に会えたことを純粋に喜んでいたようで、志賀崎グループの後継者云々の話しは私には一切しなかった
「それじゃ、まだしばらくは私の秘書でいてくれる訳だな」
「えっ?」
社長はしたり顔で私を見ていた
私は諦めたように言った
「残念ながらそういうことになります」
「残念ながらとは心外だな」
「社長みたいな曲者に使われる身にもなってください」
「君も言うねぇ」
「ああそれと、ご報告することがあります」
「ん?」
「相川課長と話し合ったんですが、私、子供が出来たら退職しようと思ってます」
社長は心底びっくりしたようだったが、そうかと言ってにっこりと笑った
「君の積み上げてきたキャリアの事を考えたら止めるべきなんだろうが、もう決めたんだな?」
「はい」
「秘書室のメンバーには?」
「私が妊娠したら伝えようと思っています。こればっかりは授かりものなのでいつになるか分かりませんから」
「それがいいだろうな。でも、君の事だからまた働きたくなるんじゃないのか?その時はどうするんだ?」
「その時は母の会社にでも入れてもらいますよ。今まで甘えさせてもらってないですから、これからは思いっきり甘えさせてもらいます」
私がそう言うと、社長は大爆笑した
私もそれにつられて笑った
「それ、南美には言ったのか?」
「いえ、まだ」
「言ってあげた方がいい。きっと泣いて喜ぶよ」
「はい。そうします」
やっと笑いが収まった社長に改めて頭を下げた
「社長、2週間の休暇ありがとうございます。正直、助かりました」
「そうか。じゃ仕事に戻ってくれ。今日は10時にからT建設へ出向くんだったな?」
「はい、今日は矢野くんも連れて行こうと思ってます」
「分かった。じゃ後で」
「はい、失礼します」
私が部屋を出ようとすると社長は独り言のように呟いた
「君が辞める時は寂しいだろうね」
私は聞こえない振りをして、一礼をし、社長室の扉を閉めた
そして呟いた
「ありがとうございます」
私はふうっと息を吐くと、自分のデスクに戻り、自分がいない間、なるべくみんなが困らないよう仕事に没頭した
家に帰って健次に2週間の休暇をもらえることになったと伝えたら、だったら結婚式前の1週間は母のところに帰ってればいいと言われた
私が驚いていると、返事を聞く前に健次が母に電話をしてその事を伝えた
そして電話を切ると言った
「お義母さん、嬉しそうだったよ。親孝行しておいで」
私は、うんと頷いて健次に抱きついた
こうして独身最後の1週間は、母と過ごす事になった
私がソファに座ると、社長も私の前のソファに座った
「南美とはちゃんと話せたみたいだな。南美から電話があったよ。お礼を言われた」
「いえ。こちらこそ色々お気遣いをしていただいて。志賀崎さんへの橋渡しも社長がしてくれたと相川課長から聞きました。ありがとうございました」
「いや。学生の頃の南美を知ってるからか、なんとかしてあげたくてね。本当にがむしゃらに勉強してたよ、復学したあとの南美は。今思えば、1日でも早く君を迎えに行きたかったんだろうな」
「そう、ですか」
私が頭を下げると社長がフッと笑った
「社長?」
「まさか君が、あの志賀崎先輩の娘だとは思ってもみなかったよ」
ああと思って、私も笑った
「そうですね。私もまだ実感がありません」
「そうだろうな……君は志賀崎グループへは行かないのか?」
私はびっくりして社長を見ると、こちらを伺うように私を見ている
私は、いいえと言って首を横に振った
「行きませんよ」
「なぜ?」
「……志賀崎さんもそんな事を望んではいなかったんでしょう。一言もそんなことは言いませんでした」
「そうか」
そう、志賀崎さんは私に会えたことを純粋に喜んでいたようで、志賀崎グループの後継者云々の話しは私には一切しなかった
「それじゃ、まだしばらくは私の秘書でいてくれる訳だな」
「えっ?」
社長はしたり顔で私を見ていた
私は諦めたように言った
「残念ながらそういうことになります」
「残念ながらとは心外だな」
「社長みたいな曲者に使われる身にもなってください」
「君も言うねぇ」
「ああそれと、ご報告することがあります」
「ん?」
「相川課長と話し合ったんですが、私、子供が出来たら退職しようと思ってます」
社長は心底びっくりしたようだったが、そうかと言ってにっこりと笑った
「君の積み上げてきたキャリアの事を考えたら止めるべきなんだろうが、もう決めたんだな?」
「はい」
「秘書室のメンバーには?」
「私が妊娠したら伝えようと思っています。こればっかりは授かりものなのでいつになるか分かりませんから」
「それがいいだろうな。でも、君の事だからまた働きたくなるんじゃないのか?その時はどうするんだ?」
「その時は母の会社にでも入れてもらいますよ。今まで甘えさせてもらってないですから、これからは思いっきり甘えさせてもらいます」
私がそう言うと、社長は大爆笑した
私もそれにつられて笑った
「それ、南美には言ったのか?」
「いえ、まだ」
「言ってあげた方がいい。きっと泣いて喜ぶよ」
「はい。そうします」
やっと笑いが収まった社長に改めて頭を下げた
「社長、2週間の休暇ありがとうございます。正直、助かりました」
「そうか。じゃ仕事に戻ってくれ。今日は10時にからT建設へ出向くんだったな?」
「はい、今日は矢野くんも連れて行こうと思ってます」
「分かった。じゃ後で」
「はい、失礼します」
私が部屋を出ようとすると社長は独り言のように呟いた
「君が辞める時は寂しいだろうね」
私は聞こえない振りをして、一礼をし、社長室の扉を閉めた
そして呟いた
「ありがとうございます」
私はふうっと息を吐くと、自分のデスクに戻り、自分がいない間、なるべくみんなが困らないよう仕事に没頭した
家に帰って健次に2週間の休暇をもらえることになったと伝えたら、だったら結婚式前の1週間は母のところに帰ってればいいと言われた
私が驚いていると、返事を聞く前に健次が母に電話をしてその事を伝えた
そして電話を切ると言った
「お義母さん、嬉しそうだったよ。親孝行しておいで」
私は、うんと頷いて健次に抱きついた
こうして独身最後の1週間は、母と過ごす事になった