可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
番外編1 何かが1つ違っていれば★進藤南美視点★
もう2度とここに来ることはないと思っていたのに
そして、この人にも会うことはないと思っていたのに
「お久しぶりね、南美さん。まさか、あなたが会いに来てくれるなんて思わなかった」
「こ無沙汰しています。私も、もうお会いすることはないと思っていました」
志賀崎静香さん……私が愛した人の母親、そして私を苦しみ続けた人
いつも鬼のような顔をして私に怒りや憎しみをぶつけていた人は、あの頃が嘘のようにおだやかな顔をしていた
「昨日、奈南美がお世話になったと聞きました。それと、この指輪と写真、ありがとうございました。一言お礼が言いたくて参りました」
「そう……」
お茶を一口飲んで沈黙が流れる
ふうっと息を吐くと、目の前の人がクスッと笑った
「あの?」
「お互い年をとったわね。私はこの通り車椅子だし、あなたもただ若かったあの頃とは違う。今は、飛ぶ鳥を落とす勢いの会社の社長になってるんだもの」
「そうですね……色々ありましたが、なんとかここまでやってこれました」
「本当に。私があなたの会社を奪おうとしたのに、あなたはそれを乗り切った。本当に女がてらすごいことだわ」
「そんなこと……」
いいえと、目の前の人は首を振る
「女としても私は幸せになることはなかった。社会人としても、私はただ志賀崎の家に生まれただけで今の地位があるだけ。ゼロから会社を築き上げたあなたとは雲泥の差だわ。母親としても、これはあなたも苦労したようだけど、もう奈南美さんとは仲直りしたんでしょう?」
「はい」
「あなたは、私が欲しかったものを全て手に入れた。こんなこと勝負することじゃないけど、私の完敗よ、南美さん」
私が何も言えずにいると、目の前の人は自嘲気味に笑いながら言った
「もし私が男に生まれていたならと何度も思ったわ。そうだったら、私が父の後を継げたのに、志賀崎グループで働いて父の力になれたのにって。女に生まれたばっかりに私は働くことも許されず、望まぬ結婚をさせられ、後継ぎを産むことだけを期待された。時代もあったんでしょうけど、私は自分の意思を持つことを諦めていたわ。でもあなたは私が諦めていたことを全てやってのけた。だから今のあなたがある。そうでしょ?私があなたの会社を買収しようとした時も、あなたはがむしゃらに会社を守ろうとしていた。それを見て、私はもうあなたには敵わないと思った。だからあなたの会社を買収するのを途中でやめたの」
確かにあの時、会社を守るためになりふり構わず働いていた
でもしばらくすると、うそのように志賀崎グループからの圧力がなくなり、いつの間にか買収の話はなくなっていた
「もう何もかもが虚しくなっていったの。気づけば、私の周りには家族はいない。寄ってくるのは志賀崎の名前に寄ってくるものばかり。こんな広い家に私と、執事の杉山と、家政婦が2人。寂しいものよ。でもこれは私が招いた結果。因果応報なのよ」
目の前の人はそう言うと、外の綺麗に手入れされている日本庭園を眺めていた
それは本当に寂しそうに
「あの、1つ聞きたいことがあります」
「何かしら?」
「奈南美に、志賀崎の家に入るようには言わなかったんですか?」
目の前の人はびっくりしたように私を見たが、微笑んで言った
「今さら、世襲で継ぐようなものでもないでしょ?現に、今の志賀崎グループは実力重視で経営されているわ」
「でも」
「いいの。仮に奈南美さんにこの話をしても受けると思う?」
「……受けないでしょうね」
「でしょ?それでいいのよ。大丈夫、父には私があの世に行った時に謝っておくわ」
ふふっと笑うその顔は少女のようでなんだか可愛らしかった
私もつられて笑った
「そうだ。杉山、南美さんにあれを」
「はい。かしこまりました」
そして、この人にも会うことはないと思っていたのに
「お久しぶりね、南美さん。まさか、あなたが会いに来てくれるなんて思わなかった」
「こ無沙汰しています。私も、もうお会いすることはないと思っていました」
志賀崎静香さん……私が愛した人の母親、そして私を苦しみ続けた人
いつも鬼のような顔をして私に怒りや憎しみをぶつけていた人は、あの頃が嘘のようにおだやかな顔をしていた
「昨日、奈南美がお世話になったと聞きました。それと、この指輪と写真、ありがとうございました。一言お礼が言いたくて参りました」
「そう……」
お茶を一口飲んで沈黙が流れる
ふうっと息を吐くと、目の前の人がクスッと笑った
「あの?」
「お互い年をとったわね。私はこの通り車椅子だし、あなたもただ若かったあの頃とは違う。今は、飛ぶ鳥を落とす勢いの会社の社長になってるんだもの」
「そうですね……色々ありましたが、なんとかここまでやってこれました」
「本当に。私があなたの会社を奪おうとしたのに、あなたはそれを乗り切った。本当に女がてらすごいことだわ」
「そんなこと……」
いいえと、目の前の人は首を振る
「女としても私は幸せになることはなかった。社会人としても、私はただ志賀崎の家に生まれただけで今の地位があるだけ。ゼロから会社を築き上げたあなたとは雲泥の差だわ。母親としても、これはあなたも苦労したようだけど、もう奈南美さんとは仲直りしたんでしょう?」
「はい」
「あなたは、私が欲しかったものを全て手に入れた。こんなこと勝負することじゃないけど、私の完敗よ、南美さん」
私が何も言えずにいると、目の前の人は自嘲気味に笑いながら言った
「もし私が男に生まれていたならと何度も思ったわ。そうだったら、私が父の後を継げたのに、志賀崎グループで働いて父の力になれたのにって。女に生まれたばっかりに私は働くことも許されず、望まぬ結婚をさせられ、後継ぎを産むことだけを期待された。時代もあったんでしょうけど、私は自分の意思を持つことを諦めていたわ。でもあなたは私が諦めていたことを全てやってのけた。だから今のあなたがある。そうでしょ?私があなたの会社を買収しようとした時も、あなたはがむしゃらに会社を守ろうとしていた。それを見て、私はもうあなたには敵わないと思った。だからあなたの会社を買収するのを途中でやめたの」
確かにあの時、会社を守るためになりふり構わず働いていた
でもしばらくすると、うそのように志賀崎グループからの圧力がなくなり、いつの間にか買収の話はなくなっていた
「もう何もかもが虚しくなっていったの。気づけば、私の周りには家族はいない。寄ってくるのは志賀崎の名前に寄ってくるものばかり。こんな広い家に私と、執事の杉山と、家政婦が2人。寂しいものよ。でもこれは私が招いた結果。因果応報なのよ」
目の前の人はそう言うと、外の綺麗に手入れされている日本庭園を眺めていた
それは本当に寂しそうに
「あの、1つ聞きたいことがあります」
「何かしら?」
「奈南美に、志賀崎の家に入るようには言わなかったんですか?」
目の前の人はびっくりしたように私を見たが、微笑んで言った
「今さら、世襲で継ぐようなものでもないでしょ?現に、今の志賀崎グループは実力重視で経営されているわ」
「でも」
「いいの。仮に奈南美さんにこの話をしても受けると思う?」
「……受けないでしょうね」
「でしょ?それでいいのよ。大丈夫、父には私があの世に行った時に謝っておくわ」
ふふっと笑うその顔は少女のようでなんだか可愛らしかった
私もつられて笑った
「そうだ。杉山、南美さんにあれを」
「はい。かしこまりました」