可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
私は杉山さんに一枚のメモを渡された
「これは?」
「志賀崎家のお墓の住所よ。尊もそこに眠ってるわ。奈南美さんがお嫁に行く前にでも会いに行ってあげて欲しいの。もちろん、あなたも一緒に」
私はびっくりして目の前の人を見た
だって、私は先輩のお葬式にも出ることを許されなかった
お墓参りなんてもってのほかだったのに
「……いいんですか?」
「ええ、尊もそれを望んでいるわ、きっと。だから、お願い」
私は涙を堪えながら頭を下げた
「ねえ、南美さん。私時々思うの。もし、何かが1つ違っていれば、あなたが私を『お義母さん』と呼んでくれてる人生もあったんじゃないかって」
「静香さん……」
「今さら何言っても遅いわね。なんだか疲れたわ。南美さん、もう失礼してもいいかしら?今日は来てくれて嬉しかった」
「いえ。私も急に来て申し訳ありませんでした」
杉山さんが静香さんの車椅子を押して部屋から出て行こうとする時、私は思わず呼び止めた
「あのっ……」
静香さんは、ん?と私を見た
「また来てもいいですか?」
「えっ?」
「今度は、奈南美の結婚式の写真を持ってきます。奈南美の花嫁姿を見てあげてください」
「南美さん」
静香さんは目を丸くして私を見ている
でも私は続けた
「用事がなくても、また来ます。しばらくしたら、奈南美にも子供ができると思います。その時は、その子も連れてきます。その子と、奈南美と、健次さんと、私も来ますから。だから……」
静香さんは涙を流していた
私は静香さんに駆け寄り、膝をついて、手を握った
「だから、元気でいてください」
「南美さん、いいの?」
「確かに私達には色々ありました。正直、未だに許せるものでもありません。でも、奈南美は静香さんの孫で、奈南美の子は静香さんのひ孫です。その事実は変わりません」
「南美さん……」
「それに、いつか私が静香さんを『お義母さん』と呼びたくなる日がくるかもしれない。奈南美だって『お祖母さん』と」
「……そんな日が来るのかしら?」
「時間がかかるかもしれません。でも、私はそうなりたいと思います」
「ありがとう……」
そうして静香さんは自室へと戻って行った
戻ってきた杉山さんは玄関まで見送ってくれていた
「進藤様、今日はありがとうございました」
「いえ、急な申し出にも関わらず取り次いで下さってありがとうございました。あの、静香さんは……」
「奥様は、もう永くはありません。数年前から心臓を患っております」
「そう、ですか」
なんとなくそんな感じがしていた
なんとなくだが……
「でも今日、進藤様が生き甲斐を与えて下さいました。ありがとうございます」
杉山さんは深々と頭を下げてこう言った
「またお越しになるのをお待ちしています」
「はい。静香さんにお体を大切にとお伝えください」
私は志賀崎家を後にした
多分私はこれからこの家に何回も来るのだろう
あんなに近寄りたくもなかったのに
「先輩、これでいいんですよね?」
空を見上げて呟いた
でもどこかで先輩が笑っているような気がした
「これは?」
「志賀崎家のお墓の住所よ。尊もそこに眠ってるわ。奈南美さんがお嫁に行く前にでも会いに行ってあげて欲しいの。もちろん、あなたも一緒に」
私はびっくりして目の前の人を見た
だって、私は先輩のお葬式にも出ることを許されなかった
お墓参りなんてもってのほかだったのに
「……いいんですか?」
「ええ、尊もそれを望んでいるわ、きっと。だから、お願い」
私は涙を堪えながら頭を下げた
「ねえ、南美さん。私時々思うの。もし、何かが1つ違っていれば、あなたが私を『お義母さん』と呼んでくれてる人生もあったんじゃないかって」
「静香さん……」
「今さら何言っても遅いわね。なんだか疲れたわ。南美さん、もう失礼してもいいかしら?今日は来てくれて嬉しかった」
「いえ。私も急に来て申し訳ありませんでした」
杉山さんが静香さんの車椅子を押して部屋から出て行こうとする時、私は思わず呼び止めた
「あのっ……」
静香さんは、ん?と私を見た
「また来てもいいですか?」
「えっ?」
「今度は、奈南美の結婚式の写真を持ってきます。奈南美の花嫁姿を見てあげてください」
「南美さん」
静香さんは目を丸くして私を見ている
でも私は続けた
「用事がなくても、また来ます。しばらくしたら、奈南美にも子供ができると思います。その時は、その子も連れてきます。その子と、奈南美と、健次さんと、私も来ますから。だから……」
静香さんは涙を流していた
私は静香さんに駆け寄り、膝をついて、手を握った
「だから、元気でいてください」
「南美さん、いいの?」
「確かに私達には色々ありました。正直、未だに許せるものでもありません。でも、奈南美は静香さんの孫で、奈南美の子は静香さんのひ孫です。その事実は変わりません」
「南美さん……」
「それに、いつか私が静香さんを『お義母さん』と呼びたくなる日がくるかもしれない。奈南美だって『お祖母さん』と」
「……そんな日が来るのかしら?」
「時間がかかるかもしれません。でも、私はそうなりたいと思います」
「ありがとう……」
そうして静香さんは自室へと戻って行った
戻ってきた杉山さんは玄関まで見送ってくれていた
「進藤様、今日はありがとうございました」
「いえ、急な申し出にも関わらず取り次いで下さってありがとうございました。あの、静香さんは……」
「奥様は、もう永くはありません。数年前から心臓を患っております」
「そう、ですか」
なんとなくそんな感じがしていた
なんとなくだが……
「でも今日、進藤様が生き甲斐を与えて下さいました。ありがとうございます」
杉山さんは深々と頭を下げてこう言った
「またお越しになるのをお待ちしています」
「はい。静香さんにお体を大切にとお伝えください」
私は志賀崎家を後にした
多分私はこれからこの家に何回も来るのだろう
あんなに近寄りたくもなかったのに
「先輩、これでいいんですよね?」
空を見上げて呟いた
でもどこかで先輩が笑っているような気がした