可愛げのない彼女と爽やかな彼氏

「ねえ？お母さん」
「ん？」
「私、ちゃんとこの子達、育てられるかな？」


母は一瞬驚いていたが、にっこり笑って私の頭を優しく撫でた


「大丈夫よ。あなたはいい母親になれるわ」
「でも……」
「大丈夫。あなたは１人じゃないでしょ？健次さんも、健次さんのご家族もいる。お友達もいるし、佳苗さんだって。それに、私という反面教師もいるわ」
「え？」


私は驚いて母を見た
母はちょっと悲しい顔をして言った


「私は、あなたにとっていい母親とはいえなかったわ。あなたが不安に思うことも分かる」
「お母さん」
「だからね？あなたが私にしてもらいたかったことをこの子達にしてあげればいいし、私があなたにしたことをこの子達にしなければいいの。簡単なことでしょ？」


そして優しい笑顔
私はにっこり笑って頷いた


「奈南美、誰だって赤ちゃんを産むことは不安なのよ？あなただけじゃないの。大丈夫よ」
「ありがとう、お母さん」


そうしていると、健次がお茶を持ってきてくれた


「仲直りした？」
「別に喧嘩してないし」
「そう？お義母さん、お茶どうぞ」
「ありがとう、健次さん。そういえば、赤ちゃんの名前もう考えてるの？」
「うん。健次が考えてくれたの」
「本当に？」


母が期待した目をしているのを見て、私と健次は笑いあった
そして健次は、名前を書いた紙を母の前に差し出した


『長男 翔（かける） 次男 輝（ひかる）』


「亡くなったお義父さんの尊（たける）という名前から、漢字を一文字に、音も似たような名前をと思って……もちろん、『この子達の人生が光り輝く人生で、その人生を思う存分かけ巡って欲しい』という願いも込めました」


言葉を失う母に言った


「いい名前でしょ？」
「……ええ、そうね。健次さん、ありがとう」


健次はいいえと言ってにっこり笑った
母は目に涙をいっぱい溜めて私のお腹を撫でた


「奈南美、私きっと、この子達を思いっきり甘やかすと思うわ」
「なんとなく想像がつくけどね。でも程々にしてよ」
「さあ？どうかしら？」



そうして３人で笑いあった
私が、翔と輝を出産したのはそれから数週間後
どっちかと言うと私に似ている双子を見て、母が狂喜乱舞したのは言うまでもない