極上の恋愛はいかが?
「莉央!」
「あぁ、咲希(さき)か…どうかした?」
「それはこっちの台詞だと思うけど…」

渡り廊下でぼんやりとしていると、同期で一番仲のいい二宮 咲希(にのみや さき)が眉間にシワを寄せて聞いてきた。
それもそのはず、いつもの雰囲気はなく、どこか疲れた雰囲気を出しているからなのだ。

「心配されるようなことはないよ」

笑って見せるけど、咲希には作り笑いだとお見通しなんだろう。

「無理だけはしないようにね」

そう言って莉央をすり抜け、階段を降りて行った。
自分の中に秘めるものが溢れ出るのをくい止めているのがこんなに辛いだなん思いもしなかった。

所属している営業部の補佐室に戻る為、廊下を歩いていると目の前には何やら言い争っている部長と社長がいる。
気づかないふりをして通り過ぎれるものならそうしたいが、直属の上司でもある佐々木 樹(ささき いつき)と社長の須郷 悠真(すごう ゆうま)となればそれもできない。
だからと言って、道を変えたところで営業部にはたどり着けない。
究極の選択か…と一瞬目眩がしそうだった。
ここは時間を改めて出直すと言うのもありだな。とも考えたが、そんな時間もないからその選択はすぐに却下となった。

「よし」

そう小さく呟いて、言い争っている中へと進む。
通り過ぎる時に軽く会釈をして、すぐに通り過ぎよう。
社長まであと数歩

あと少し

「お疲れさまです」

予定では、さらっと通り過ぎて部署にまっすぐに向かうはずだったんだ。
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