今日から家族になりまして。
それから、また1週間が経った。
空たちが来てもう2週間。
私の日常は、変わっていくばかり。
はじめは受け入れられなかったのに、どんどんと、自然に受け入れらるようになっていっている。
ただひとつ、変わらないのは……
空のことを、まだ名前で呼べないこと。
呼びたくないわけじゃない。
なんというか、人の名前を呼ぶっていうことが、私にとってすごく大きなことのように思えてしまう。
“そら”
どうして、簡単なようで、こんなに難しいんだろうか。
でも。
「陽菜〜、買いもん行ってくるけどなんかいるかー?」
「……アイス。」
「了解!」と、リビングのソファに座って答える私に空が敬礼する。
そして、パタパタと玄関まで早歩きする足音が聞こえていた。
……たのしそ。
……てか、あれ?
空って学校行ってないの?
私はずっと引きこもってるから、学校のことなんにも気にしてなかったけど
空は!?
「ねぇ!」
私はリビングを飛び出して、玄関の扉を開いて出ていこうとしていた空に向かって声をかける。
「ん?」
「あんた、そーいや学校どうしてんの?この2週間全然学校行ってなかったけど」
「え、どうしてんのって……今夏休みだぜ?」
「えっ」
夏休み!?
もうそんな時期だったの!?
そーいや、もう7月!?
世は夏休みの時期だったわけ……
「「えっ」て……なんだよ、いつの時期で止まってんだお前は」
「ふはっ」と吹き出すように笑う空。
なんだか、今が何月だとか気にしていなかった自分を少し恥ずかしく思う。
学校に行くこともないから、特に季節を気にすることなんてない。
「い、家の中にいると、あんま気にしなくなっただけ。別に、世の仕組みを知らないわけじゃないよ?それだけは言っとく」
私がうつむきながらそう言うと、空はまた吹き出すように笑う。
何が面白いんだろう。
「はいはい。今度一緒にどっか行く?」
「い、行かないよ!!」
空に即答で答える私。
空は「だよな」と言ってニッと笑うと、「じゃ、行ってくる」と扉を開けて出ていった。
空は、私が外に出たがらないことは承知で、無理やり連れ出そうともしない。
私は、外の世界が怖い。
どこにも行きたくない、なんてわけじゃない。
行けるものなら行きたいし、出られるものなら出たい。
だけど、周りの人の目とか、そういうのを気にしちゃって
また、傷つけられるんじゃないかとか思うと
出るに出られない。
私は、これから先、どうやって生きていくんだろうか。
このままでいいなんて思わないけど
このままがいいって思ってしまう自分もいて。
傷つかない方向へ行こうとすることが
多くのものを制限する。
私をいじめてたあいつらから逃げて
誰にも会わないように家に閉じこもって。
学校は、外の世界は、傷つくことばかりで自由がないって思ってたけど
だからといって家の中にずっといることが
それが私にとっての自由なのだろうか。
したいことをして、行きたいところに行って……
それができないのは、あいつらにやられたことを気にして
それが原因で外に出られなくて
結局、私はまだあいつらに
縛り付けられているだけなんじゃないのだろうか。
私はきっと
自由じゃ、ない。
そう思うのは、私の何かが、変わっていってるからなのだろうか。