今日から家族になりまして。
空のお父さん 〜陽菜said〜
ガチャッ
玄関から少し離れたところで一人突っ立ったまま考え込んでいると、玄関の扉が開いた。
え、空、もう帰ってきたの!?
私は慌ててリビングに戻り、ソファに何事もなかったかのように座る。
すると……
「ただいまぁ〜、おぉ、陽菜ちゃん」
空のお父さんだった。
え、なんで今日こんな早いの?
まだ昼の1時なのに。
私の顔に考えていることがそのまま出ていたのか、空のお父さんは私を見てクスッと笑った。
「今日は午前出勤だったんだよ。だから早めに帰ってこれたんだ」
私が何も聞いていなくても、勝手に話が進む。
「…………」
私は、空のお父さんと話すのはまだ慣れていない。
この2週間も、この人が話してきたら返すくらい。
別に、嫌いなわけじゃないけど……
なんだか、どう接すればいいのかわからない。
まだこの家に来た時よりは、拒絶感はないけど。
「ゆか……お母さんは?」
今、お母さんのことを「由香里」と言いかけた。
だけど、気を遣っているのか私の前ではお母さんのことをあまり「由香里」とは呼ばない。
でも、普段二人の時とか、名前で呼んでいるんだなということがわかる。
仲が良い、そう思った。
「2階。掃除してる」
私は、自分でもわかるくらい無愛想な顔つきで言ってしまった。
「そうか。空も2階かい?」
「空は買い物」
私の素っ気ない態度にも、この人は普通に対応してくれる。
なんというか、変わった人だ。
空と似ている。
いや、空が、この人に似たのか。
「じゃあ、俺は紅茶の用意でもしておこうかな。みんなすぐに飲めるように。陽菜ちゃんも、紅茶でよかった?」
空のお父さんは、優しく私に笑いかける。
「…………なんでも。」
「了解!」
そう言って、空のお父さんは私にビシッと手をおでこの前に出して敬礼をした。
……空とおんなじ。
あの敬礼を教えたのは、この人なのか?
そう思いながら、私は空のお父さんの行動をじっと見ていた。
「ありがとうね陽菜ちゃん。空と仲良くしてくれて。」
空のお父さんが、4人分のコーヒーカップを出しながら私に言ってきた。
慌てて、私は空のお父さんから視線を外す。