今日から家族になりまして。
ヒーロー
あれからまた1週間が経ち、空たちが来て3週間目くらい。
私はだいぶ、空とも空のお父さんともコミュニケーションが取れるようになってきた。
素っ気ない感じはまだ残ってるかもしれないけど、自分なりには前より普通に話せてるとは思う。
「陽菜!俺今から買いもん行くけどなんかいるもんあるか?」
午後2時。
空がメモ用紙にえんぴつを走らせながら私に聞いてくる。
お母さんから頼まれた物を買い忘れないように、紙に書いて行くようだ。
空は、この家に来て買い物によく行っている。
お母さんのお手伝いという感じだろう。
「アイス。」
「アイス好きだな」
私が即答すると、「お前はアイスしか食わねぇのか」と言わんばかりの目で見てくる空。
「何味がいいの?」と空が私に聞いてくるので、「チョコ」とまた即答する。
「甘党だな」
「うるさ!」
ふっと鼻で笑う空に、私はぎゃん!と吠えるように言った。
「じゃ、これでいい?由香里さん」
「うん!ありがとう空くん〜♪お願いね♡」
「またなんかあったらメールでも電話でもして!」
「りょーかいっ☆」
空とお母さんはだいぶ仲良くなったみたいで、空もはじめの時みたいに敬語は使わなくなっている。
なんか、話してるの見るとふつーに友達みたいだし……。
……まぁ、なんかはじめよりは、みんなと居やすくなった。
お互いの気遣いとか少なくなってきて、緊張とか、なんかいろいろと解けていってるって感じ。
「じゃ、いってきます!」
空はビシッとおでこの前で手を斜めにしてあてて敬礼する。
「いってらっしゃい!」
お母さんも同じように、ビシッと敬礼した。
……ほんと、仲良いな……。
私は2人のやりとりを少し遠目から見守る。
すると。
「陽菜、いってきます!」
そう言って空は私にも敬礼してきた。
突然のことで、「え、あぁ」と言いながら反射神経で手が勝手に上がってしまった。
敬礼はしなかったけど、顔の横まで来た自分の手を見て私はなんだか恥ずかしくなる。
吹き出すように笑ったあと、空はリビングをあとにして家から出ていった。
セミの声が聞こえる外を窓から眺めて、天気よすぎでしょ、なんて思ったのも、つかの間のことだった。