今日から家族になりまして。



緊急事態だと感じ取り、俺はすぐさまドアノブに手をかけ、勢いよくドアを開けた。




「陽菜!!」




すると、崩れ落ちたように座り込んでいる陽菜がそこにいた。




「陽菜……!?大丈夫か!?」




俺は陽菜の目線に合うようにかがむ。




顔を伏せていた陽菜は、俺の声で気がついたみたいで、バッと顔を上げた。




陽菜の目には、涙が浮かんでいる。




「どうした!?何があった……」




俺が陽菜に、何があったのか尋ねようとした時だった。




陽菜が、俺にしがみついてきたのだ。




「……ひ、な!?」




俺は思ってもみなかった出来事に、思わず焦ってしまう。




陽菜は俺の肩をがっしりと持ち、胸に顔を埋めていた。




……泣いているようだ。




体はひどく震えていて、なにかに怯えているようだった。




俺は尻もちをつき、陽菜に押し倒されるような体勢になってしまっていて、身動きが取れない。




「……どうしたんだよ。大丈夫だって」




俺は、陽菜に触れていいのかどうか迷いつつ、そっと陽菜の肩に手を添えた。




陽菜からは、拒絶するような様子はない。




とりあえず何か混乱していたみたいだったから、落ち着かせようと左手で自分の体重を支えながら、右手で陽菜の背中をポンポンと軽く叩いた。




徐々に陽菜は泣きやんでいき、落ち着いていくのがわかる。




「もう大丈夫か?」




俺の胸に顔を埋める陽菜に声をかけた。




「…………わた……し……」




俺の肩をつかむ力がゆっくりと解けていって、陽菜はやっと顔を見せる。


< 92 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop