結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。

本能の重要性をキスで説く


仕事の話も、プライベートの話も、どんなたわいないことでも、彼の口から語られるとすべてが特別なもののように思える。

そんな不思議な感覚を抱きつつ、ひと通りお寿司を食べ終わってお店を出る前に、私はお手洗いに向かった。

時間はもう九時になろうとしている。結構いたけどあっという間だったな。

別に専門的な話をしたわけでもないのに心はとても満たされたし、これで終わりだと思うと……正直、物足りない。

複雑な気分で手を洗いながら、なにげなく鏡を見上げると、普段とは全然違う自分がいてちょっとびっくりする。


そうだ、今日はコンタクトでばっちりメイクをしているんだった。

別人というほどではなくても華やかだし、自分で言うのもナンだけど、いつもよりは可愛いと思う。

なんだか顔の血色も、肌ツヤもとても良いし。チークはつけておらず、お酒を飲んでいないから酔っているわけでもないのに。


「もうEPAとDHAの効果が……?」


頬に手を当て、まじまじと鏡を覗いて呟いてしまったけれど、そんなことあるわけない。

魚に多く含まれ、血液を綺麗にして美肌にするという成分を摂取したとはいえ、こんなに早く効果は現れないはずだ。

< 116 / 276 >

この作品をシェア

pagetop