結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「男除けだよ。変なヤツに捕まってるんじゃないかと思ったから」


歩き出す彼から明かされたのは、意外な理由。社長は、私が甘利さんにナンパされているとでも思ったのか。

私はキョトンとしたあと、その過保護さがおかしくて吹き出してしまった。


「なんだ、それなら心配は無用です。声をかけられても、相対性理論の話をすれば大抵の男性は逃げていくので」

「結局ナンパされてんじゃねーか……」


社長はボソッとつっこみ、脱力した。くしゃっと髪に手を潜らせるその顔は呆れ気味だ。

すぐ近くの駐車場に着き、車のもとにやってくると、社長は助手席のドアを開けながら言う。


「お前はしっかりしてるように見えて、意外と危なっかしい。滑って転ぶわ、お持ち帰りされそうになるわ」


うぐ、と押し黙る私。しっかりしていないことはないと思うのだけれど、そう言われるとなにも返せない。

しかし、少し口を尖らせる私の頭に、大きな手がぽんとのせられる。見上げれば、優しい瞳で微笑む彼がいる。


「だから、誰かが守ってやらないとな」


独り言のようにこぼされたそのひとことで、胸がトクンと揺れた。

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