結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
昼間は無機質な工場プラント群が、夜になるとこんなに綺麗に輝くものだったとは。みなとみらいの夜景は見慣れているけれど、こういう工場夜景もとても素敵。

静かな夜の海に浮かぶ別世界のようなその景色を堪能する私の隣で、シートベルトを外した社長は骨張った手でネクタイを緩める。

女子ならおそらく九十パーセントの確率で胸キュンしてしまうその仕草に、例外なく私もときめいてしまう。なにげないのにどうしてこんなに色気を感じるのだろう。

この瞬間だけ夜景から社長へ目を移し、うっとりと眺めていると、彼もこちらを向き視線がぶつかった。


「で、さっきの男は知り合いだったのか?」


リラックスした様子の彼から改めて問いかけられ、惚けていた思考を慌てて戻す。


「えっと、彼は一度お見合いをさせてもらった人なんです」


正直に答えると、社長のきりりとした眉がわずかにひそめられる。


「お見合い? そんなことしてんのか」

「もう退会しましたよ。どんな人が自分に合うのか、データに基づいてしっかり分析してくれる結婚相談所なら希望があるかと思ったんですけど、なんか違う気がして」

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